2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23401041
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
岩淵 聡文 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (80262335)
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Keywords | 人類学 / 海洋人類学 / 民族誌 / インドネシア / バンカ島 / 漂海民 / オラン・セカッ / 海岸マレー人 |
Research Abstract |
本研究課題の中心は、インドネシア共和国のスマトラ島東部に位置するバンカ島およびその周辺の島嶼あるいは珊瑚礁域において実際の海洋人類学調査(フィールド・ワーク)を実施し、その成果を民族誌研究という形態で発表するものである。インドネシア共和国内での調査は、いずれの分野においてもインドネシア共和国調査技術省からの調査許可と調査査証にもとづき実施される。本調査の調査技術省からの正式な調査許可書は平成23年11月17日に研究代表者に交付された。調査許可番号は、376/SIP/FRP/XI/2011である。これにより、同月24日にバンカ島へ入島した。なお、その直前の11月19日から20日にかけて、本調査のインドネシア共和国側の受け入れ研究機関である西スマトラ州パダン市にあるインドネシア国立アンダラス大学人類学部を訪れ、受け入れ研究者であるヌルシルワン・エフェンディ教授と調査研究に関する事前協議を行った。バンカ島州政府および地元の移民局、警察などでの事務手続きを経て、11月下旬からバンカ島およびその周辺の島嶼部における調査が開始された。これは3月31日まで継続実施されたが、途中平成24年2月6日から3月3日までは、所属部局における所用により日本への一時帰国を行った。本調査は基本的には人類学調査であるため、参与観察を中心とする研究が行われている。海岸マレー人の村落における漁業活動についての調査も適宜実行されているが、3月までとくに集中的に行われたのはバンカ島文化の基層を担っていると思料される当該地域に分布する漂海民、すなわちオラン・セカッ文化の調査である。世界的な研究が全くない同文化はすでに変容が著しく、主たる調査地として選択した南部のリアット島においても伝統的な家船は全く残存していない。本調査は、同文化の世界最後の調査となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア共和国内における調査は、そのすべてがインドネシア共和国調査技術省により認められるものではない。同省よりの調査許可の発給がなければ、本研究課題の実施自体が不可能であった。研究代表者によるバンカ島における調査は、同省および地元州政府の全面的な支援を受けている。また、海岸マレー人およびオラン・セカッの地元インフォーマントからも、好意的な協力を常に受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
バンカ島における調査は、平成25年2月10日まで継続実施の予定である。一方、調査中に問題点も明らかになってきている。とくに、オラン・セカッの文化は変容が顕著で、その動態を研究するのには歴史研究が欠かせない。しかしながら、地元においては歴史資料(映像資料を含む)の集積は全く行われておらず、これは海岸マレー人の文化についてもいえることである。これに対応するためには、インドネシア共和国の旧宗主国であるオランダの研究所における補完的な史資料調査を確実に実施する必要がある。
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