2011 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおけるリプロダクションの歴史的変遷-医療化の要因と女性への影響
Project/Area Number |
23401043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Cultural anthropology/Folklore
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
松岡 悦子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (10183948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小浜 正子 日本大学, 文理学部, 教授 (10304560)
嶋澤 恭子 神戸市立看護大学, 看護学部, 講師 (90381920)
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Keywords | 出産 / 助産師 / 医療化 / リプロダクション / アジア / リプロダクティブ・ヘルス/ライツ / 家族計画 / 産後うつ病 |
Research Abstract |
アジアの地域では、近代化によってリプロダクションは急速に医療のパラダイムで捉えられるようになった。本研究では、その過程がどのように起こったのかを、それにかかわるさまざまなアクターの力関係に焦点をあてながら、聞き取り調査、文献資料の収集などにより詳細に明らかにすることを目的としている。松岡はインドネシアのジョクジャカルタ、韓国のソウルと釜山、モンゴルのウランバートルとハラホリンで調査を行い、嶋澤はラオス、研究協力者の姚毅は中国の北京と湖南で調査を行った。 インドネシアでは、「正常産のガイドライン」が2000年代後半に導入されたことにより、村落部での助産師による出産が急速に医師の手に移りつつある。韓国においては、1973年の医療法の改正により助産師が医療職とされ、助産所が医療機関となり、医師と助産師の職能範囲の境界が曖昧となったことが、結果的に助産師職の衰退を招いていると思われる。また助産師職の衰退が医療化を促進し、帝王切開率が36%(2010-11年)という事態を招いている。モンゴルでは、比較的早くから国家の政策により、自宅から病院への分娩の移行が生じていた。ラオスでは、最も古いマホソット病院を調査対象とし、そこで史料を収集した。また、政府の看護局の役人や病院スタッフに聞き取りを行った。ラオスでは歴史的には、フランス、タイの影響が大きく、現在はさらにグローバル化やASEAN諸国から強い影響を受けている。中国では、北京の図書館で資料収集を行い、湖南の村落部で産婦が死亡したケースについて聞き取りを行った。中国では村落部の方が都市部より帝王切開率が高いが、このことは帝王切開が産婦の情報量に反比例することを示唆している。 以上のような結果から、医療化を促進あるいは抑制する要因として、女性の知識や情報量、助産師職の自律度、医師と助産師の境界の明確化が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度は出産の変遷に関しては、いずれの地域についても、かなりのデータを集めることができた。だが、家族計画については、まだ不十分な面がある。インドネシアで開催された学会で研究発表を行い、若手の研究者との交流ができたが、本科研メンバーによる独自の研究会を、中国あるいはインドネシアで組織することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、インドネシアで現地の若手研究者を交えて研究会を行う予定である。また調査をさらに行い、いくつかの共通項目を設定して、それらについてはどの地域においてもデータが得られるようにする。それによって、比較を可能にし、アジアのリプロダクションの大まかな変遷の歴史をグラフや図に示すことができるようにする。その上で、ヨーロッパの研究者を招いて、ヨーロッパの出産の変遷との比較を行う予定である。
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