2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23401050
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
田辺 繁治 国立民族学博物館, 名誉教授 (00045262)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 素二 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50173852)
西井 凉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20262214)
平井 京之介 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 准教授 (80290922)
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
古谷 伸子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究機関研究員 (20514326)
|
Keywords | 文化人類学 / 社会学 / コミュニティ運動 / 社会変革 / アセンブレッジ |
Research Abstract |
本年度は各地のコミュニティ運動の実態を把握するため、特に、国際機関、行政機関、NGOやメディアなどがコミュニティに介入、連携し、またコミュニティがそれらに抵抗する局面に注目し、それらが<アセンブレッジ>を構成していく過程や関係性を明らかにすることを目指した。 (1)代表者・田辺は、北タイにおける隠者パンの仏教ユートピア運動が、1990年代以降、新たな修行地を開括し、多様な勢力の<アセンブレッジ>の中で展開した過程を調査した。 (2)松田は、北タイのモン、ヤオ、カレン人のコミュニティ・フォレスト運動において、NGOが導入した森林保全ルールを遵守する村と柔軟に運用する村とに分化している実態を明らかにした。 (3)西井は、南タイ・サトウーン県の村において、ムスリムのダワ運動の2007年以降の住民の参加、指導者、さらに地方行政・警察の介入等の変動について調査した。 (4)平井は、タイ中部、東北部の博物館について情報を収集するとともに、芸術局、学術機関、NGO、メディア、仏教寺院等を含む<アセンブレッジ>の形成について調査した。 (5)阿部は、カンボジア・パイリン市で元僧侶が運営する私立学校を中心に教師たちの生活や学校運営をコミュニティの観点から調査した。 (6)古谷は、北タイ・チェンマイ県を中心に民間治療師運動におけるネットワーク化についての情報を収集し、そこに関与したNGOやその他の機関との連携についても調査した。 (7)岡部は、2001年に設立された「北タイ・コミュニティ開発僧ネットワーク」に関与してきた僧侶たちを中心に情報収集し、それ以前の僧侶グループやNGO、村人たちとの関係を調査した。 また、平成23年7月の研究会では<アセンブレッジ>概念について議論し、平成24年3月の研究会には濱西栄司氏(ノートルダム清心女子大)を招聘し、社会学における社会運動研究の現状について展望して頂き、本研究の枠組みとの関連で議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究対象のコミュニティ運動の形成と展開についての歴史的過程を把握すると同時に、多様な機関、行政、NGO、メディアなどの介入、連携、またそれらに対する抵抗の局面に注目してデータを収集した。これによって各個別研究の事例において、多様な機関、組織、運動が<アセンブレッジ>を構成しながら異質な関係性が充満していく場合、また逆に当初形成されていた<アセンブレッジ>が消滅しつつ同質化していく場合があることが判明した。これらの事実は、次年度における調査がコミュニティ運動内部に形成される共同性、価値と倫理を探求するにあたって、十分に考慮すべき点であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、当初の研究計画どおり、運動をとおしてコミュニティ内部で形成されつつある新たな共同性に注目して調査を続行し、そうした共同性を支えている価値や倫理の内容を把握するとともに、それらが<アセンブレッジ>のなかで個人や集団によって再帰的に生み出されていく過程を解明することを課題とする。 また、2013年3月上旬には、タイ・チェンマイ大学において海外共同研究者と共にワークショップを開催し、各自のデータを比較検討しながら分析の方向性を探り、3年目の調査課題を画定する予定である。
|