2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23401050
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Section | 海外学術 |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
田辺 繁治 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (00045262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
西井 凉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20262214)
平井 京之介 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80290922)
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
古谷 伸子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20514326)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 社会学 / コミュニティ運動 / 社会変革 / アセンブレッジ |
Research Abstract |
本年度は、運動をとおしてコミュニティ内部で形成されつつある新たな共同性に注目して調査を行い、そうした共同性を支えている価値や倫理の内容を把握することを目指した。さらに、それらが外部の個人、集団、コミュニティとの接合によって拡大していく過程にも注目しながら調査を進めた。 ①代表者田辺は、隠者パンのユートピア空間が瞑想中の「夢想」を基に構築されてきたこと、および隠者と女性修行者との間に新たな共同性が芽生えていることを明らかにした。②松田は、北タイの三つのコミュニティをとりあげ、上からの「統治」と下からの「対応」から生まれる共同的実践の事例を収集し、生活主義的思想の可能性を追究した。③西井は、ビルマ国境のメーソットにおけるムスリム・コミュニティの構成、ダッワ運動の歴史、および現在のダッワ運動に対する住民たちの態度についてのデータを収集した。④平井は、北部・中部タイのコミュニティ博物館を調査し、博物館活動を通してコミュニティの伝統や観光資源化など、新たな共同性や価値が創出されつつあることを解明した。⑤阿部は、カンボジア・パイリンにおける教育事情を調査し、パイリン国際学校およびタイ国境プロンの私立学校において教師たちの生活、学校運営に関するデータを収集した。⑥古谷は、チェンマイの民間治療師のネットワーク化の経緯を明らかにし、さらに治療師たちの知識伝達、生薬生産、クライアントとの相互行為についてのデータを収集した。⑦岡部は、北タイ開発僧ネットワークに参加したタイ・ヤイ人僧侶が主催するビルマ国境の仏法センターにおいて、村人との関係、「庇護者」と呼ばれる寄進者との関係などを解明した。 また平成25年3月7-8日には、タイ・チェンマイ大学において海外共同研究者とともにワークショップを開催し、各自の研究経過を報告して比較検討し、分析の方向性を探るとともに、来年度の調査計画を画定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究対象のコミュニティ運動の内部で形成される共同性とそれを支えている価値と倫理に焦点を置きながら調査を進めた。各人が対象とするコミュニティにおいてはその共同性の内容を把握することはできたが、そこにみられる価値観や倫理的態度がコミュニティ外部からのコンタクトの結果や影響である場合が考えられる。したがって、当該コミュニティが接触、連携、接合する外部の個人、集団、NGO、マスコミなどとのあいだでそれらがいかに共有され、あるいは変質したかについて注目する必要性があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は来年度(H25)が最後の年であり、各人は過去2年間の調査結果と本研究の全体的な分析枠組みとの関係を点検し、不足しているデータを補充する調査に従事する予定である。具体的には、前年度末に開催したワークショップの議論において確認された各人調査の課題に応える方向に沿った補足調査を実施することになる。 また、H26年3月上旬には、タイ・チェンマイ大学において海外共同研究者および招聘予定のコメンテータと共にシンポジウムを開催し、各人は3年にわたる調査研究の成果をとりまとめた論文を提出する。提出された論文はシンポジウム終了後、できるだけ早い時期にリライトして単行本としての成果刊行を目指す。
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