2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23402018
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
衛藤 幹子 法政大学, 法学部, 教授 (00277691)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジェンダー / 民主主義 / 市民社会 / 政治代表 / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究は、女性運動の影響力と女性の政治的代表性の向上をめぐる国際比較により、参加民主主義と代表制民主主義とが調和して機能し、民主主義がより深化することを、実証的に明らかにすることを目的にしている。 本年度は、これまでの調査から構想した市民社会と民主主義的政治制度との連結点を明らかにする理論モデルを研究成果の中間発表として、国内及び海外の学会で報告し、学術誌にも掲載することができた。併せて、海外の研究者との学術交流や現地調査を実施した。実施事項は以下のとおりである。 ①6月23日に日本大学法学部で開催された日本比較政治学会研究大会において、スウェーデンを事例に女性運動と女性の政治的代表性の関連性を理論と実証の両面から検討した報告を行なった。②7月9日~16日にスペインのマドリッドで行われた第22回世界政治学会世界大会において、上記の理論モデルに当たる部分について報告した。③9月10日~12日、台湾の中央研究院(台北市)を訪問し、同研究院にある民族博物館の見学調査(多文化主義、アイデンティティと政治などについて聞き取り)、欧米研究所のChih-Ming Wang博士並びに彼の研究生と日台のジェンダー課題について議論した。④2月28日から3月6日まで、オーストラリアにおけるジェンダー・スタディズ・ネットワークの調査を実施した。3月1日、現地到着後、ターゲットグループとのミーティングの打ち合わせと調査準備を行ない、2日にはメルボルン大学歴史学部、女性史研究会の会議に参加し、意見交換、議論を行なった。4日には、メルボルン市内にある、ヴィクトリア女性センターを見学、5日は、メルボルン市内にある女性病院を視察、女性のための総合医療の実践について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要部分である、市民社会、代表制民主主義、そして民主主義との連関をダイナミックに示す理論モデルがほぼ完成したことにより、本研究は順調に進捗していると評価することができる。 成果の一部は、すでに国際学会、国内学会での口頭発表し、さらに国際的学術雑誌で刊行された。わけても、世界政治学会(IPSA)世界大会での口頭発表と欧米の著名な国際的学術雑誌2誌に成果報告できたことは、本研究の達成度を実感させるものであった。本研究の理論的フレームワークにあたる投稿論文が掲載された「Journal of Civil Society」は、市民社会をめぐる理論と実証の研究を取り上げる世界的な学術誌である。投稿論文の審査は、編集委員会でのスクリーニングを経たのち、外部の覆面審査員3名が審査するという厳しいもので、これを経て、論文が掲載されたことは、本論文の学術的価値が認められたものと評価できよう。 一方、日本を事例に、女性の「実質的代表(substantive representation)を取り上げた論文が掲載された、「Harvard Asian Quarterly」は編集委員会からの依頼による原稿であったが、本研究のテーマに関連する女性の政治代表と市民社会との関わりに焦点を合わせて、論文を構成することができ、本研究の発展に結びつけることができた。本論文については、海外での反響が少なくなく、英国、米国、カナダの研究者からの引用が報告されている。 台湾中央研究院訪問は、若い研究者との交流に一定の成果があった。また、オーストラリアにおける現地調査は、当地がジェンダー研究の盛んな地域であることから、今後の学術交流などが期待でき、その点で将来の発展に結びつく調査となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に引き続き、本研究で構想している理論的フレームワークを海外で検証することに力を注ぐ予定である。具体的には、2010年9月から2011年8月までの1年間在外研究を行なったストックホルム大学政治学部と2004年と2005年に短期の調査で滞在したデンマークの北欧アジア研究所で、研究セミナーを開催し、本研究者のアイデアを議論の遡上に乗せることを考えている。 ストックホルム大学政治学部は、ジェンダー政治研究、民主主義研究、市民社会研究に関する研究者が充実しており、本研究者のアイデアや理論フレームを試行的に発表し、意見を求めるのに打ってつけの場ということができる。一方、北欧アジア研究所では、日本の事例を国際比較の観点から検証するというテーマで報告を行なうことを計画している。本研究所は、北欧におけるアジア研究のメッカであるが、市民社会研究への関心が高く、活発な議論が期待できる。 デンマークのコペンハーゲン大学には、コペンハーゲン学派と呼ばれる国際的にも著名な研究グループがあり、コペンハーゲンにおける民主主義や市民社会研究は極めて質が高い。北欧アジア研究所は、コペンハーゲン大学と提携しているので、コペンハーゲン学派の研究者との学術交流も可能であれば実現させたい。 以上を踏まえながら、学術論文の海外学術雑誌への投稿、学会報告など成果発表への努力を引き続き行なう予定である。なお、次年度以降は、国内的な成果発表にも力を入れる予定で、編著の出版が計画されている。
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