2011 Fiscal Year Annual Research Report
FTAと技術協力-マレーシア自動車産業におけるトヨタ生産方式の移転と定着
Project/Area Number |
23402022
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
穴沢 眞 小樽商科大学, 商学部, 教授 (40192984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
目代 武史 九州大学, 大学院・統合新領域学府, 准教授 (40346474)
清水 一史 九州大学, 経済学研究学府, 教授 (80271625)
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Keywords | FTA / 技術協力 / トヨタ生産方式 / マレーシア / 自動車 |
Research Abstract |
本年度は主にトヨタ生産方式の移転を担う機関の移行に重点を置いた研究を進めた。具体的にはこれまで日本政府が派遣した専門員により地場企業に対して実施していたトヨタ生産方式の移転がマレーシアの政府系機関であるマレーシア自動車研究所と地場のセットメーカー2社に移行するプロセスをマレーシア側の関係者とその移行プロセスに関与した日本人専門員の双方から詳細な情報を入手し、検討を加えた。また、過去に日本人専門員の指導を受け、トヨタ生産方式の導入に成功した、いわゆるモデル企業と呼ばれる地場部品メーカーにおいて、日本の技術協力として実施されたトヨタ生産方式の移転について受け手の側からみた実態についてもつぶさに検討を加えた。 これらからは実施機関の日本からマレーシアの移行という実験的な試みに中で、両国の関係者が戸惑いつつも地場部品メーカーの競争力強化に向けた最善の策を見いだそうとする努力の跡がみられた。今後、引き続き、日本人専門員の仕事を段階的にマレーシアの専門員に置き換えるが、実施機関の移行伴うスキルの移転と維持が重要になると思われる。 この回のケースはFTAの締結に伴い、比較劣位にある地場企業の競争力強化を政府間協定に基づく技術協力により高めようとするものであり、ソフトの移転という実験的なものである。さらに、5年間という政府間協定の期限の後、日本側からマレーシア側に実施機関を移行し、さらにトヨタ生産方式の普及を目指すという試みである。これまでの経緯と今後の動向を見極めることは我が国のソフト面の経済協力のあり方を考える際の試金石になりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は過去5年間の我が国の技術協力の実績についての評価とトヨタ生産方式を地場自動車部品メーカーに移転する実施機関の日本からマレーシアへの移行を中心に調査を進めてきた。これらについては日本側、マレーシア側双方から情報を入手することができた。特にモデル企業と呼ばれる地場部品メーカーにおいて詳細なヒアリングを行うことにより、トヨタ生産方式の移転について実践に則した知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き継続するトヨタ生産方式移転の実施機関の移行に伴う問題点の解明や、あらたにトヨタ生産方式の導入を図る地場自動車部品メーカーへの実際の移転方法と日本側が実施したものとの共通点相違点などを現地調査により明らかにする。ソフトの技術移転については移転する側、される側双方からのアプローチが不可欠であり、ヒアリングを中心として実態の究明に努力する。また、近隣諸国での動向を踏まえ、これらの国々の政策とマレーシアの政策との比較検討も行う。
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