2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化と変貌する南アジアのマイクロファイナンス
Project/Area Number |
23402023
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 早苗 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80334994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 敏彦 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (00407652)
岡本 眞理子 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (50351078)
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Keywords | グローバル化 / マイクロファイナンス / 南アジア / 出稼ぎ / 携帯電話 |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバル化の中で変容しつつある南アジアの農村で、マイクロファイナンスがどのような可能性と課題をもつかを検証することである。平成23年度は、ブータン、ネパール、インド、バングラデシュを訪問し、各国におけるマイクロファイナンスの状況とグローバル化による農村の変化について現地調査を実施した。 ブータンにおいてはマイクロファイナンスは未発達で、グローバル化の影響も比較的少ないことがわかった。ただし、インド、ネパール、バングラデシュから流入する首都ティンプーの出稼ぎ労働者の数には目覚ましいものがある。 ネパール、インド、バングラデシュでは、農村から海外に渡った出稼ぎ労働者がもたらす送金が、その家族と地域全体に豊富な資金を提供していることがわかった。従来マイクロファイナンスは融資額が少ないため、海外出稼ぎ資金としては役に立たないと考えられてきた。しかし、近年海外出稼ぎ労働者がもたらす地域経済の活性化は無視できないものになっており、マイクロファイナンス機関による融資としては比較的額の大きい海外出稼ぎ資金を貸し出す機関が、ネパールやバングラデシュで出始めている。 グローバル化がマイクロファイナンスに与える影響として無視できないもう一つの現象は、情報技術の普及によるモバイル・バンキングの登場である。バングラデシュ最大のNGOであるBRACとグラミン銀行の系列会社であるグラミン・フォーンが提携して作った新会社「bKash」は携帯電話を使った「普通預金口座」の機能を提供し始めた。現在は、主として日雇い労働者や小売業者が小金を送金するのに利用しているが、将来はマイクロファイナンス機関と組んで融資の返済システムに導入するなど、今後の展開が期待さされる。同様なシステムは、インドやネパールでも将来の普及が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査に行く国が当初の予定(インド、バングラデシュ、スリランカ)と少し変わり、スリランカの代わりにブータンとネパールを付け加えたが、調査実績としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
南アジア諸国の農村地域がグローバル化の影響でどのように変貌しており、マイクロファイナンス機関はその動きにどのように対応しているのかを引き続き調査する。今年度と来年度でスリランカとパキスタンを調査する予定だが、パキスタンでの調査は政治情勢を見極めて、慎重に判断したい。スリランカではマイクロファイナンス機関がインデックス保険に参入している状況などを調査する。
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