2012 Fiscal Year Annual Research Report
境界国家・ラオスの生存と発展:政治・経済・社会のアクターと大メコン圏
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23402025
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
武石 礼司 東京国際大学, 国際関係学部, 教授 (40412803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 久洋 東京国際大学, 国際関係学部, 准教授 (20385959)
多賀 秀敏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30143746)
吉川 健治 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (30512727)
瀧井 貞行 東京国際大学, 国際関係学部, 准教授 (60311320)
高橋 克秀 國學院大學, 経済学部, 教授 (80379502)
森川 裕二 富山大学, 学内共同利用施設等, 特任助手 (90440221)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アセアン後発国 / 中所得国の罠 / ランドブリッジ国 / 境界国家 / 国際河川 / 人材育成と教育 / インフラ整備 / 産業クラスター |
Research Abstract |
2012年度には、内陸国であるラオスを中心としつつその周辺諸国のベトナム、カンボジア、ミャンマーという後発アセアン諸国、隣国のタイ、中国の雲南省等も含めた調査活動を実施した。幅広くメコン川流域諸国の検討を行い、問題点の洗い出し、現在生じている状況の整理と、今後のこれら諸国・地域の動向に関して考察を行った。特に、社会主義政権であるラオス、ベトナム、および、民主化への着手がようやく始まったところであるミャンマーの今後に社会・制度の変容の可能性・その動向に関して重点的な検討・議論を行った。 その一方、ミクロレベルでの調査として、農村におけるインタビュー、アンケート調査も引き続きラオス内で実施した。全世帯数のうちの77%が農業に依存しているラオスにおいて、経済発展が進み首都圏およびその他の主要都市の発展は比較的順調に進むとしても、市場経済から隔離された状況にある農村の経済が蝕まれ・破壊されてしまう危険性があるのではとの危機意識を持ち、調査を実施した。この調査には、ラオス大学環境科学部の協力を得て6つの農村での聞き取り調査を村長および住民から行い、また、2つの家計に関しては1年間にわたり家計簿をつけてもらい、その内容を分析する作業を進めている。農村の収入は少ないものの、米を自作自給することで基本的な食料を確保し、副食は庭・森林・池等から野菜・穀類・魚類・昆虫等を採取し出費を抑える工夫がなされている。精米所が、村での米作の物資と資金の流通の拠点となり、村民に対する安全弁の役割をしている点も発見できた。さらに、季節ごとに販売できる自然資源(タケノコ等)の販売で収入を得る工夫、新たな栽培植物の導入(ゴム・キャッサバ・コーヒー等)も確認できた。農村の社会機能はこうした生活のあり方に見合うように出来上がっており、土地環境・気候等も考えつつ作物の選別がなされていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ラオスの農村に関する調査を順調に進めることができ、同国の中部から南部にかけての分析が進んだ。中国の影響力が大きいラオス北部地域の調査研究が残された課題である。また、経済発展が順調に進み、タイ等からの工場進出がラオスの主要都市では始まっており、今後の後発アセアン諸国の展開を考えるためには、同じく工場の進出が進むミャンマー、ベトナム、カンボジアのそれぞれの地域を比較した調査研究をより深く進める必要がある。また、中国南部、タイの北部と東北部との比較も重要となる。 経済発展が進む中で、農村から農民が「離農」という形をとるのではなく、農業基盤を維持したまま近代化に向かうことが可能か、またその場合の近代化された農業とはどのようなものかに関する検討も必要となるが、その検討を行う詳細なデータは2012年の農村調査が順調に進んだことで、かなり得られている。よりいっそうのデータの分析と検討を進める作業が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
3か年の研究の最終年となるため、今までの研究の成果を問うという意味で、ラオスからのラオス大学の共同研究者の教員2名の来日を仰いで、2013年6月に宇都宮大学で開催される国際開発学会で共同発表を行う。また、本科研費の研究者とワークショップを開催し、今まで取得できたデータのより深い解析を行い、論文としての提出・発表を行っていくこととする。 また、CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)諸国の経済発展の可能性を探るため、補足的な調査をCLMV諸国および中国南部、さらに同じく発展途上にあるフィリピン(ミンダナオ島ほか)の調査も実施し、より幅広い知見を集めながら、メコン流域地域の今後の発展の可能性と、その発展が持つ意味、そして発展の限界という点についても含めた検討・研究を行う。
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Research Products
(19 results)