2011 Fiscal Year Annual Research Report
消費行動における自己概念の役割に関する国際比較研究:消費者間の関係性を手がかりに
Project/Area Number |
23402040
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
木村 純子 法政大学, 経営学部, 教授 (00342204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 玄哲 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (00384157)
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Keywords | 母娘消費 / 消費文化論 / 拡張自己 / 関係性 / アイデンティティ |
Research Abstract |
ライフステージの大きな移行期において、消費者はしばしば全く異なった状況で適切に振る舞うことを要求される。本研究の焦点である娘にとっては、たとえば学生から社会人になったり、結婚して妻となったり、出産して母となったりと、非常に大きな環境の変化が訪れる。このような変化において、消費者はさまざまな所有によって、状況に応じて好ましい自己像を演出しようとすることが知られており、状況的自己という概念によってこれまでも数々の研究がなされている。このような移行期において、消費者はさまざまな困難に直面する。娘が状況に応じて好ましい理想自己像を決定しようとする際には、重要な他者である母親によるコントロールを受けることが多くなる。しかしながら、特にファッション購買などは状況的自己の創出においても重要な要素であるため、娘と母親との間にはコンフリクトが生じる。そのようなコンフリクト局面において、母親と娘はダイナミックな相互作用を通じて娘にとって望ましい状況的自己像を決定することがしばしばある。ここでは、母親は娘へのコントロールを通じて娘の理想自己像を決定しようとし、娘は母親からのコントロールを受け入れようとする。しかしながら、日本のような母娘関係が特殊な文化圏においては、娘による母親のコントロールへの受け入れ様相は多様なものとなる。娘が将来職場で身に付けるべきアウトフィットを選択するために実施された6の母娘ペアによるカタログショッピングにおける映像データの解釈から、そのような統制-受容の様相は単なる依存関係を越えた複雑なものとなっていたことがわかった。具体的には、娘が母親のコントロールを受容する様相には「consideration-oriented acceptance」 「dependency-oriented acceptance」「resemblance-oriented acceptance」という3つが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は科研費交付予定額の70%までは立替申請が認められていたものの、残りの30%は減額になる可能性があったため、調査の実施が当初の計画から大幅に遅れた。具体的には16組の母娘に対するインタビュー調査を開始できたのは9月に交付が満額になると決まった後(10月になってから)であった。調査が2011年12月に終了した後、データのかきおこしを外部業者に依頼した。データの納品は1回目が2月20日。2回目が2月23日。3回目を現在待っている最中のため、いまだすべての文書データを手にすることができず、分析が遅れ、交付申請書に記載した研究の目的の達成度が落ちた。
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Strategy for Future Research Activity |
本調査がとりあげたインフォーマントはすべて、親子が同居しており、比較的緊密な関係を結んだペアであった。すべての娘は母親が指定する衣服の購入を受容していたが、緊密でない母娘関係において同様の事象が確認されるかは、今後研究が待たれるところである。また、ライフステージの異なる段階、たとえば結婚や出産などのイベントにおいて創出される状況的自己の生成プロセスについても明らかにすべきであろう。さらに、状況的自己の創出プロセスそれ自体が消費者のおかれた関係性によって影響を受けることを考慮すれば、母娘という関係性とは別の関係性について同様の検討を加えることも、非常に意義のあることであろう。
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