2012 Fiscal Year Annual Research Report
経済危機とトランスナショナリズム:ペルー人の移民戦略をめぐって
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23402043
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
樋口 直人 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (00314831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (40302335)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日系人 / デカセギ / 帰還移民 / 外国人労働者 / 東日本大震災 / リーマン・ショック / 在日外国人 |
Research Abstract |
今年度は、夏期と冬期にペルーで調査を進めたほか、沖縄や神奈川など国内でも調査を進めた。具体的には件の聞き取りを実施しており、そこで得られた知見は以下の通り。 (1) 国内調査:①年金の加入期間も短いことから、社会保障に十分カバーされるとはいえず、引退後の不安が現実のものとなりつつある。ただし、ペルーに帰国するという選択肢も、かつてほど魅力的なものではなくなっている。かつてよりペルーの物価は高くなっており、日本での貯蓄や少額の年金ではペルーで生活を立て直せないからである。その意味で、在日コリアンの無年金問題と類似した状況が今後発生する可能性が高い。②日本での仕事は回復しつつあるが、安定性という点では悪化している。 (2) 海外調査:①震災や経済危機(特に前者)を受けてペルーに帰国した者の一定割合が、再び渡日して日本での就労を選択している。そうした者のほとんどは、帰国を予定しないまま帰国しており、十分な貯金や帰国後の見通しがないままペルーで生活を再建していた。親族からの援助により定職につくなどしない限り、この層がペルーで持続的に生活するのは難しい。②ここでいう持続的な生活とは、子どもを私立学校に通わせるような中間層としての生活水準を維持することを指す。帰国した者の多くは、そうした生活を前提としているが、私立学校の学費は高いところでは最低賃金と同程度になる。多くの家庭では、こうした教育費などの出費によりぎりぎりの生活を強いられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査は順調に進んでおり、そこで得られた知見から分析枠組みも思いつきつつある。ただし、まだ本格的な知見の論文化には至っていないため、②としておいた。
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Strategy for Future Research Activity |
このままの形で調査を進めるが、今後は県人会その他のフォーマルな組織に対する依頼も進め、インタビュー経路を数多く確保する必要がある。また、アルゼンチン調査の知見との比較が、これまで新たな知見を導き出す上で示唆的だったため、アルゼンチン調査のまとめも早急に進める。
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