2011 Fiscal Year Annual Research Report
景観の公共性に関する日米比較社会研究--建築保存から社会保存へ
Project/Area Number |
23402049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Sociology
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
堀川 三郎 法政大学, 社会学部, 教授 (00272287)
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Keywords | 歴史的環境 / 保存運動 / 都市計画 / 都市ガヴァナンス / 町並み / アメリカ / 小樽 / セントルイス |
Research Abstract |
研究第1年目にあたる2011(平成23)年度は,主に(1)日本国内事例の継続調査,(2)米国ミズーリ州セントルイス市における歴史的環境保存に関する文献解読および現地調査研究,の2本の柱を中心に研究を行った。 第1の柱である国内研究は,北海道小樽市での定点観測を継続して実施した。その結果,歴史性や風土性を意識してデザインされてきた小樽の町並み景観が,次第に脱歴史的で地域性を欠いたデザイン最優先の店舗に置き換わりつつある兆しを発見することができた。換言すれば,それは小樽観光の「終わりの始まり」であるように思われる。 第2のアメリカでの研究は,アメリカ・ミズーリ州セントルイス市内での歴史的建造物の取り壊し事件の調査を実施した。現地での関係者への聞き取りや裁判の結果についての資料を入手し,事件の全貌が徐々に明らかになってきた。1960-70年代に旧郵便局舎の保存運動を成功させた同市の保存運動ではあったが,2000年代に入ってから,再度,同じ旧郵便局舎と,それに隣接する「センチュリー・ビル」をめぐって紛争が生起した。60年代は「開発業者対保存運動」という構図であったが,近年の紛争は「地元保存運動対開発業者+全米保存運動」となり,全米保存運動がその歴史上初めて取り壊しを容認した点が注目される。最終的に地元の運動が負け,歴史的建造物である「センチュリー・ビル」は取り壊された。セントルイスで起こった2つの保存運動は,なぜ,かくも異なった展開を見せたのか。次年度は,この問いを基点に,さらに調査研究していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セントルイス市での調査で,関係者から協力の申し出があったことと,調査の主題が,より明確になってきたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きセントルイス市での調査を継続し,それを補完する意味でシカゴ,ボストン,ニューヨーク,ワシントン特別区にける資料収集・インタビューを行う予定である。 文書資料の収集という意味では,ハーバード大学,メリーランド大学,コロンビア大学の各図書館を利用する他,セントルイス市内のワシントン大学および,セントルイス大学,ミズーリ州立大学セントルイス校でも探索を継続する予定である。
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Research Products
(2 results)