2012 Fiscal Year Annual Research Report
コモンズの管理権をめぐる多様なアクターの正当性:日中欧での調査研究と実験的検討
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23402054
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野波 寛 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50273206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 豊 名桜大学, 国際学部, 教授 (20441959)
坂本 剛 名古屋産業大学, 環境情報学部, 准教授 (30387906)
大友 章司 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80455815)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 正当性 / 迷惑施設 / NIMBY / 合意形成 / 当事者と非当事者 |
Research Abstract |
コモンズの管理権をめぐる調査研究として、平成24年度には沖縄本島中部における海岸管理を取り上げ、当該海岸線を含む村落地域の住民に対する聞き取り調査を実施した。またこれとともに、「負のコモンズ」の一種である迷惑施設として沖縄県の在日米軍基地に着目し、特に普天間基地に関する現地視察と現地研究者へのインタビューを行った。 これらの聞き取り調査より、コモンズおよび迷惑施設のいずれに関しても、その管理権の判断をめぐって、当事者と非当事者との間に同質の差異が存在することが明らかになった。すなわち、当事者は管理権の正当性について、当事者性や信頼性(管理権を持つアクターが誠実であるか、有能であるかの評価)を重視するが、非当事者は法的・制度的な正当性を重視する法規性にもとづいて、管理権の正当性に関する判断を行う傾向があった。 以上の結果より、コモンズ管理の問題を焦点とした権利の正当性に関するこれまでの知見が、迷惑施設(特に、沖縄県の在日米軍基地)の是非をめぐる決定権を焦点とした展開にも適用可能であると結論された。 平成25年には上記の結論を受け、在日米軍基地に関する沖縄県住民および本土住民を対象とした調査結果をまとめた。米軍基地の是非をめぐる政策の決定権について、当事者・非当事者・日本政府という3種のアクターいずれにその正当性があるか、沖縄県住民は信頼性や法規性を基盤としつつ、アクターごとにこれらの判断基準を使い分けていた。一方で本土住民は、すべてのアクターに対して一律的に、信頼性と法規性の両方をもとに正当統制を評価した。在日米軍基地政策の決定権の所在について、本土住民は表面的な思考過程にもとづいて判断することが示された。この調査結果については、すでに論文1本が印刷中となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、迷惑施設の決定権に関する当事者・非当事者の間での正当性の判断について、この2者の合意形成に資する知見を獲得することであった。沖縄県における在日米軍基地をフィールドに選定して調査を実施し、その結果について論文化した。今後の研究進展につながる基本的な知見を得られ、それを一定の成果として公表できた点から、ここまでの研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
迷惑施設の決定権に関する当事者・非当事者の間での正当性の判断について、沖縄県の在日米軍基地をフィールドとしたこれまでの調査より、非当事者に対する当事者の側からの情動反応(怒りや不満など)、それにもとづく正当性判断過程への影響など、さらに詳細な検討が必要な課題が明らかになった。 今後の研究では、ひきつづき在日米軍基地の決定権に関する当事者・非当事者間の比較調査を進めるとともに、実験室実験およびゲーミング実験を設定して、上記課題の検証を進める。また、迷惑施設に関する国際比較調査として、内モンゴル自治区における石炭火力発電所を取り上げ、ここでも当事者・非当事者の間での比較検証を進める予定である。
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Research Products
(3 results)