2011 Fiscal Year Annual Research Report
長期に渡る戦乱・紛争による心的外傷の実態とその残存に関する調査研究
Project/Area Number |
23402058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Clinical psychology
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
文珠 紀久野 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70191070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 環 聖マリア学院大学, 看護学部, 准教授 (00352352)
亀山 恵理子 奈良県立大学, 地域創造学部, 講師 (50598208)
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Keywords | 戦乱 / 心的外傷 / 箱庭療法 / 調査 |
Research Abstract |
本研究の目的は、長期に渡り何度も生じた戦乱・紛争が、その国の住民に与えた心的外傷の実態を調査し、心的外傷に対する有効な軽減方法を探索することである。2003年度には、調査を実施するための種々の準備と予備調査を実施した。 準備の一つは、個別インタビューを行うための場所の確保をすると共に、箱庭制作を実施するために必要な物品を日本よりコンテナによる輸送を行い、セッティングをした。 次に、個別調査のための方法の検討と調査項目作成を実施し、1991年に生じた紛争(サンタクルス事件)を体験した人々への調査依頼を行った。 予備調査として、男性5名、女性2名の協力を得、箱庭制作と半構成的個別インタビューを対象者それぞれに2回ずつ実施した。個別インタビューの1回目には、主に戦乱・紛争体験を時系列に沿って聴くとともに、対象者の背景(家族、成育歴など)をインタビューした。2回目では、過去の戦乱体験を現在からふりかえり、対象者にとっての意味が見出せるようなインタビューを実施した。 個別インタビューから、壮烈な銃撃とその後の逮捕・監禁・拷問を経験し、それに対する軽減策が施されていないまま現在に至り、就労を始めとする生活上の問題を抱えていること、健康被害も継続していることが見えてきた。箱庭制作では、かつての体験を表現した対象者からは「当時の体験が自分にとってどういう意味があったかが分かった」という陳述が得られた。2回の継続した箱庭制作によって、自分の内面に隠れていた辛い思いが自由に表現でき、それだけでかなり心的外傷が軽減することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施するための準備が整い、研究協力者への依頼も可能となった。個別インタビュー方法とインタビュー項目の検討も順調に行うことが出来ている。戦乱・紛争体験を共有するためのグループ・インタビュー実施については、現在対象者に依頼中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究に関心を持ち、自国民の心理的援助に携わる意思を持った人を対象に、ワークショップを開催する予定である。
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