2012 Fiscal Year Annual Research Report
長期に渡る戦乱・紛争による心的外傷の実態とその残存に関する調査研究
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23402058
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
文珠 紀久野 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70191070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 環 聖マリア学院大学, 看護学部, 准教授 (00352352)
亀山 恵理子 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50598208)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 戦乱 / 心的外傷 / 箱庭療法 / ワークショップ / 相互支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は、長期に渡り何度も生じた戦乱・紛争が、その国の住民に与えた心的外傷の実態を調査し、心的外傷に対する有効な軽減方法を探索することと、自国民による相互支援が可能となる方策を探索することである。2012年度には、性的被害女性への面接調査、箱庭制作を含むインタビュー、3回のワークショップを実施した。 1991年に生じた紛争(サンタクルス事件)を体験した男性5名に箱庭制作と半構成的個別インタビューを実施した。2011年に実施した2回の個別インタビューの結果を踏まえ、1年間の健康状態、生活状況、心理・精神面の状況に関してインタビューを行った。 個別インタビューから、過去の紛争、拷問体験がフラッシュバックされること、就労を始めとする生活上の問題を抱えていること、健康被害も継続していることが述べられた。しかし、インタビューと箱庭制作によって、わずかではあるが不安感などが軽減されてきたことが語られた。性的被害女性1名からは、強い不安感が述べられていたが、法的な支援が与えられることへの期待感も抱いていた。DV被害女性への支援を行っているスタッフへのインタビューからは、支援方法が見いだせず苦慮していることが述べられ、スタッフとしての力量アップの研修を渇望していた。 自国民による自国民相互の支援が可能となることを目的として、3回のワークショップを実施した。1回目は心の構造や機能について、2回目は、相手を理解するために必要な基本的事項と、箱庭療法の基本について、3回目は、支援者自身が自分に気づくエクササイズと参加者による箱庭制作を行った。参加者からは、支援するための基本が理解できたことに加え、心理学の知識をさらに学修したいとの希望が出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施できるようインタビューと箱庭制作のための部屋が整備され、安全で安心できる状況での調査が行うことができている。研究協力者への依頼も可能である。昨年度検討した個別インタビュー方法とインタビュー項目を活用できている。性的被害女性へのインタビューについては、非常にデリケートな内容であるため、現在、研究者との間に信頼関係を少しずつ形成できつつあり、平成25年度の個別インタビューに応じる準備ができている。 戦乱・紛争体験を共有するためのグループ・インタビュー実施については、現在対象者への依頼と通訳のあり方について依頼中である。ワークショップも3回開催でき、支援者育成が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、個別インタビューの対象者を広げ実施する予定である。また、支援者育成のためのワークショップも複数回計画している。特に、面接技法の演習、箱庭療法の理解を中心としたワークショップを実施する予定である。
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