2012 Fiscal Year Annual Research Report
20年後の「日本留学」の意味:インドネシア人日本留学体験者のキャリアから考える
Project/Area Number |
23402062
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有川 友子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (30271448)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 留学 / 日本 / インドネシア / 日本留学体験者 / キャリア |
Research Abstract |
本研究ではグローバル化の進む高等教育における「留学」について長期的に検討するにあたり、日本留学経験者のキャリアやライフコースの中での「留学について検討した。 平成24年度には9月16日から22日までの1週間、ジャカルタに滞在し、ジャカルタの一官庁に勤める元日本留学経験者について調査を行った。研究代表者の約20年前の日本でのフィールドワークのインフォーマントの協力を得ることができたことから、合計で18名の日本留学経験者とインタビューを行えた。この中には以前の追跡調査においてインタビューを行った日本留学経験者も6名含まれていた。インタビューを通して明らかになったこととして、第一に博士号を持つことの重要性であった。博士号は帰国直後から帰国後時間が経過した20年後になっても変わらず重要であった。第二に日本留学経験者であることからくる共通の認識と評価だった。たとえば仕事熱心であること、約束を守ること、最初から最後まで仕事をやりぬくこと、など、具体的に表現され、日本留学経験者同士の共有の認識としてあることがわかった。第三に日本への留学とともに日本以外の留学経験を持つ留学経験者からは、留学先による違いや特徴についてそれぞれの認識があることがわかった。第四に学部レベルからの留学経験者と大学院レベルだけの留学経験者による違いについて、双方の立場から留学とその後のキャリアについての認識が明らかになった。第五として、本研究は留学経験者個人レベルでの追跡調査が主な目的であったが、よりマクロレベルでの留学政策との関係も重要であることも明らかになった。今回の調査対象者は1990年代から2000年代にかけて、政府派遣の奨学金を得て留学した人たちだった。その後奨学金が減少する中で、日本留学経験者の減少、それに伴う日本とインドネシアの関係への今後の影響の可能性についても検討が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
20年後の「日本留学」の意味について検討するにあたり、平成23年度には研究代表者が20年前にフィールドワークを日本で行った時以来の信頼関係を継続している大学教員のインフォーマントを対象としてインタビューと参与観察を行った。平成24年度には対象者を官庁所属の国家公務員に絞りインタビューを行った。これまでの2年間の研究を通し、日本留学経験者として共通するところと、帰国後のキャリア、また留学時期による比較等を行うことができた。さらに、平成24年度の研究調査を通して、日本留学とともに日本以外の留学の経験を持つ留学経験者とのインタビューを通して、留学経験者の立場からの留学先の比較を行うこともできた。インドネシア人留学生としての体験と、留学先の大学や大学院のシステムや制度の違い、更には留学先の社会文化的環境による影響等、多角的に検討することの重要性が明らかになったことは、今後の研究の遂行や方向性へも多くの示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には日本留学経験を持つ大学教員を対象としてインタビュー調査を行う。具体的には平成23年度に協力を得たインフォーマントを通して、より広く日本留学経験者に対するインタビューを行う。あわせて、日本だけでなく日本以外の留学先への経験者とのコンタクトも行い、大学教員の場合についての留学先による比較も行い、官庁所属の留学経験者のキャリアについての研究成果も踏まえて考察を行う。本研究全体を通して、日本留学についての長期的なインパクトについて、留学経験者の立場から明らかにする。そして、留学政策等マクロレベルと留学経験者個人レベルとの関係性や影響等についても検討する。
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