2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハノイ市及びフエ市における水アクセスと関連づけた健康関連微生物汚染の浸水時調査
Project/Area Number |
23404016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古米 弘明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (40173546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 浩之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00302779)
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Keywords | 都市浸水解析 / 健康リスク / ベトナム / 病原微生物汚染 / 水利用・アクセス |
Research Abstract |
1)フエ市における水質調査 フエ旧市街地に点在する湖沼や水路には未処理の排水が流入していることから、糞便汚染指標としての大腸菌を中心とした晴天時の水質調査を行った。その結果、大腸菌群濃度は8500-82000CFU/100mLとベトナムの表流水水質基準(B類型、10000MPN/100mL)と同程度あるいはそれを超える地点が多くあり、著しい糞便汚染の実態を確認できた。 2)フエ旧市街地内の下水管路網踏査と湖沼群及び水路の特性調査 排水経路を考慮して浸水シミュレーションするために、下水管渠と湖沼及び水路との接続の位置、水位について調査を行って、現在保有している下水管渠データとの整合性を調べた。その結果、一部の水路が埋め立てられるなど改変されていること、湖沼と下水管渠が複雑に連結されていることが確認された。またフエ大学の研究協力者と浸水時の採水方法、浸水シミュレーションに必要な土地利用、標高データ等の収集方法について協議を行った。 3)ハノイ市における病原微生物汚染調査 ハノイ市において、洪水時の水質予測のための水質調査を行った。市街地を中心に流れる都市河川、湖・池において、大腸菌・大腸菌群、腸管系ウイルスの検出・定量を行った。その結果、全ての水試料において高濃度の大腸菌が検出され、また、対象としたいずれかの腸管系ウイルスが検出され、都市河川においてアデノウイルスが10^7copies/Lと最も高濃度で検出された。ハノイ市街地の運河等は著しい糞便汚染を受け、広範囲なウイルス汚染が生じていることが確認され、洪水発生時における病原微生物の供給源となる可能性が高いことが分かった。 4)水利用、水アクセスに関するアンケート・インタビュー調査準備 過去に深刻な浸水に見舞われた地区において、近隣住民を対象として水利用、水アクセスに関する予備的なインタビューを行い、今後のアンケートの作成のための参考情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、晴天時だけでなく降雨時における水質調査を計画していたが、フエ大学との連携や調査資材の準備が雨季の終わるまでに完了しなかったことから、晴天時でのデータ取得にとどまった。しかしながら、平成24年度における浸水時調査や雨天時調査の下準備を行うなど、ほぼ当初想定していた計画内容を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、腸内細菌としてのバクテロイデス、病原微生物としてのクリプトスポリジウムも測定することとしていたが、試料の入手やその前処理作業量から判断して、他の細菌指標やウイルスに重点を置いた測定とすることが妥当であると判断している。また、下水管路網と湖沼・ため池の位置関係や接続状況が想定以上に複雑であること、その詳細が現地調査でも十分に把握できないこと、下水道管理会社にもそのデータが保有されていないことなど、多くの困難な課題がある。したがって、現有の管路ネットワークデータと様々な接続条件での浸水解析により異なる浸水推定結果をまず得て、今年度を含めた過去の浸水実態との比較を行うことに重点を置くこととした。これは、逆に接続や位置関係を精査するべき個所を推定する意味を持つ。また、不足している地域の標高データの測量に関しては、従来の方法ではなく、標高データ車載センサにより道路沿いの標高データの詳細取得の可能性を検討することとした。
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