2012 Fiscal Year Annual Research Report
ハノイ市及びフエ市における水アクセスと関連づけた健康関連微生物汚染の浸水時調査
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23404016
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古米 弘明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40173546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302779)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境質定量化・予測 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 土木環境システム / モニタリング / リモートセンシング |
Research Abstract |
本研究は、ベトナムのハノイ市やフエ市を対象として、浸水常襲地域における衛生状態、水利用に関する実態を踏まえて、浸水と健康リスクとの関係、さらには浸水制御のあり方について検討することを目的としている。今年度は、フエ市を対象に密集市街地での浸水状態における健康リスクに関わる病原微生物による水質汚染調査や水利用実態調査を行い、地表面特性を把握した上で浸水シミュレーションを実施した。 まず、フエ旧市街地を対象として雨天時と浸水時の水質調査を実施した結果、雨天時には運河と池の全ての測定地点で 10,000CFU/100mL以上の大腸菌群数濃度が検出され、晴天時より高い値となった。また浸水時には路上氾濫水において、全ての地点で1,000CFU/100mL以上の大腸菌群数濃度が検出され、糞便汚染のある汚水が雨天時流出している可能性が示唆された。 次に、浸水シミュレーションに関しては、Quickbird衛星によるマルチスペクトル画像について、建物や道路、植生地や間地の抽出による浸透面、不浸透面の識別方法を検討した。また、現地踏査により判明した排水路や下水管路と湖沼や調整池との接続状況を分布型流出モデルに反映してモデル解析を実施した結果、過去の浸水実績図を再現できることが確認できた。 水利用、水アクセスに関するアンケート・インタビュー調査に関しては、フエ旧市街地では、浸水発生時には家屋の2階や3階に避難し、平常時に蓄えた水を利用していることなどが明らかとなった。一方、フエ省の農村地域の4コミューンにおいては、水道水を含めて消毒処理が不十分で大腸菌の検出事例が認められた。利用水源は簡易水道と地下水が中心であるが、一部季節的に天水利用が行われていた。水利用量には乾季と雨季の季節による変動が認められるが、下痢症のリスクは洪水時に大きく、雨季と乾季には大きな違いが見られないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の特色は、浸水時における水質汚染や水利用の実態調査および浸水シミュレーションの両面を実施して、雨季や浸水時における水アクセスと関連づけた健康関連微生物汚染の状況を評価する点である。したがって、1)浸水状況調査と浸水時における水質調査の実施、2)水アクセスに関する実態把握、3)浸水シミュレーションの精度向上、などを行うことが重要な達成度評価の項目である。 現在までに、ハノイ市やフエ市における浸水時採水調査、浸水実態を経時的に調査した研究成果は、我々のものを除き公表されていない。フエ理科大学と連携して、水位センサや電気伝導度センサに設置による浸水状況や水質変化の把握が連続的に実施されたこと、病原微生物汚染実態を調査したこと、は高く評価できると考えている。また、健康リスク評価に関連して、浸水常襲地域に特化して水利用と水アクセス、衛生状況に関するヒアリング調査を、フエ旧市街地と農村部において実施して、水利用や水へのアクセス状況を把握したこと、農村部では感染症発生に関する情報も取得したことは、特筆すべき成果である。 浸水シミュレーションの高度化には、市街地の周辺に存在する河川、運河、湖沼、調整池の機能を考慮することが求められる。この高度化のために、排水システムの接続状況調査、調整池などのサイズ調査、標高データ取得など、モデル解析の高度化に必要な情報を新規に取得した。そして、浸水シミュレーションを通じて、主要な浸水発生要因や発生メカニズム、浸水頻発地域の特定が可能となれば、浸水対策を効率的に進める上で有用な情報を提供できると期待される。 研究成果の発表は、国際会議2件、国内会議2件である。また、本研究の成果を広く公表するために、ベトナム側の研究協力者や実務者を対象としたワークショップをフエ市で開催する準備も進行している。したがって、研究は順調に進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎えることから、過去2年間の成果統合を進めるとともに、1)浸水状態調査と洪水時の水質調査のデータ蓄積、2)水アクセスに関する実態調査に基づくリスク評価、3)浸水シミュレーションの精度向上、を目指す。下記の3項目について研究展開を図り、その成果をもとに、雨季における浸水状態と健康リスクとの関係を定量的に評価した上で、浸水制御のあり方について検討する。そして、ベトナム側の研究協力者や実務者を対象としたワークショップをフエ市で開催し、本研究の成果を広く公表するとともに今後の検討課題を議論する。 1)浸水状態調査と洪水時の水質調査:フエ旧市街地の運河と中央排水路を中心として、雨季に水位センサや電気伝導度センサによるモニタリングを実施して、浸水状況や水質汚染状況の実態把握を継続する。また、フエ理科大学と連携して、雨天時や浸水時の採水・水質調査も実施する。これらの連続観測や採水調査結果をもとに、浸水状態や雨天時汚濁状況の時系列的な追跡を試みる。これらの調査データは浸水シミュレーションの精度向上に活用する。 2)水アクセスに関する実態調査:現在までに入手した水アクセスに関するアンケート・ヒアリング調査データに加えて、2011年に実際に発生した大洪水時における水供給量データをフエ市上下水道会社より取得して、浸水期間中の水利用や水アクセス状況を整理・検討する。 3)浸水シミュレーション:引き続き、衛星画像を用いた地表面特性解析手順を精査して、不浸透面と浸透面の分布状況を精度良く推定する手法の改良を進める。排水システムデータを充実した分布型流出モデルを用いて、異なる年度の雨季4ヶ月間におけるフォン川の河川水位と降雨条件をそれぞれ境界条件・入力条件として浸水解析を実施して、浸水実態との整合性や浸水対策のあり方について検討を行う。
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Research Products
(4 results)