2012 Fiscal Year Annual Research Report
アテネのアクロポリスに建つローマとアウグストゥス神殿の実測調査及びその復元的研究
Project/Area Number |
23404027
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Architectural history/design
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
林田 義伸 都城工業高等専門学校, 建築学科, 教授 (00149999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 明子(中川明子) 徳山工業高等専門学校, 土木建築工学科, 准教授 (10442469)
中村 裕文 都城工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (50249893)
渡邊 道治 東海大学, 産業工学部, 教授 (70269108)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | ギリシア建築 / ローマ建築 / イオニア式 / 円形神殿 / 3Dレーザー計測 / 実測調査 |
Research Abstract |
1)実測調査:平成24年8月、ギリシアのアクロポリスにて、本神殿を構成する各石材の実測調査を実施した。調査実施前に、昨年度作成した27個の石材の3Dデジタル画像データから、各部寸法を計測した。また、それらの正面図や側面図、上面図等を1/5若しくは1/10で作成した。これを下図として、現地に置いて、石材図を作成した。作成した図は、下図のある27個に加えて、下図のないものも通常の計測方法(曲尺やメジャー等を使用する方法)で実施し、合計、41個の石材図を作成した。石材図には、石材の破損状況を含めて石材の形状、接合面の仕上げ、ダボ・クランプの痕跡、その他、人工的に石材表面に施してある痕跡などを、寸法と共に記録した。これらの図を、製図用フィルムに写し、インキングし、更に帰国後、デジタルデーターとした。 2)建築の復元に関する研究:昨年度作成した3Dデジタル画像から計測したスタイロベイトやアーキトレイブから、本神殿の直径を算出した。各部から得られる複数の直径値を分析することにより、スタイロベイト端で7.472mと結論した。ビンダーの示す直径は7.354mと、0.118m大きな値となった。また、立面においては、円柱高さが6.455mと結論した。これもビンダーの示す6.179mより0.276m大きな値となったが、ビンダーの復元手法には問題があり、本研究の復元案がすぐれていると考えられる。 3)様式に関する研究:本神殿と、エレクテイオン及びヴィトルヴィウスに記載されているイオニア式の様式に関し比較検討した結果、装飾手法及び円柱寸法はエレクテイオンと全く同一と見なせるが、エンタブラチュアの細部寸法の割付はヴィトルヴィウスの記載内容に類似していることが判明した。 4)建築の施工法に関する研究:アテネ市内のローマ建築の接合部について目視による調査を行った結果、本神殿との類似点を多く発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローマとアウグストゥス神殿に属すると考えられている各部材の実測図作成が、ほぼ予定通り終了した。今回の実測において、神殿の復元を検討する上では十分な石材の実測図を作成することが出来、平立面の復元案を作成することが出来た。また、短期間で大量の石材図を作成することが出来たのは、3Dレーザースキャナーを使用した実測を行った結果であり、古建築調査における3Dレーザースキャナーの新たな活用法を確立した。 また、エレクテイオンとの類似性を具体的に明らかにすることが出来、更に、ローマ時代としての様式的特徴も混在していることを突き止めることができた。施工技術に関しては、クラシック期ではなく、本神殿の建設されたローマ時代の技術との類似性を多く見出すことが出来た。従って、平成24年度に計画していた研究内容をほぼ全て実施することができたと評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本神殿に属すると考えられる新たな石材が3個発見されている。平成24度の調査では、これらの石材について実測する許可を得ることが出来なかったが、これまで発見しされている石材とは全く異なる部位の石材が含まれており、復元案の検証に欠かせない石材である。従って、これらの石材について石材図を作成する必要がある。なお、調査の許可を得るための準備は、ほぼ完了している。 2)平成24年度実施した3Dデジタル画像の計測手法は、若干簡易的な手法であった。その原因は、実測調査に間に合わせるために、早く解析する必要があったこと、画像データ容量が大きすぎて、コンピュータの処理速度が著しく低下したことなどに起因している。コンピュータに関してはメモリーを増設し、解析環境を整備した。平成24年度は、より高い精度の寸法計測を実施し、復元精度を高める予定である。 3)様式的、施工的特徴をより一層明確にするために、平成25年度は本神殿と同時期の建築実地調査及び文献調査を行い、より詳細に比較検討を行う。
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Research Products
(3 results)