2012 Fiscal Year Annual Research Report
開花フェノロジー構造の形成メカニズム:送粉系生物間相互作用の機能評価
Project/Area Number |
23405006
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 岳 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (30221930)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 博 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (90463885)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 生物季節 / 高山生態系 / ニュージーランド / 社会性昆虫 / 開花フェノロジー / 自然選択 / 群集構造 / 生物間相互作用 |
Research Abstract |
季節性の明瞭な中~高緯度生態系において、植物群集の季節的開花パタンは、花蜜や花粉を資源として利用する動物群集にとって重要な生態系の構造である。開花パタンは温度や日長などの非生物的要因のみならず、受粉成功を高めるための花粉媒介昆虫誘引を巡る生物間相互作用によっても影響を受ける。本研究は、赤道を隔てて同じような気候帯に位置する日本とニュージーランド(NZ)の高山生態系で、高山植物群集の開花フェノロジー構造と訪花性昆虫の生活環を比較し、開花フェノロジー構造が形成される過程で植物-昆虫相互作用が選択圧として作用し得るのかを検証する。社会性ハナバチを欠くNZ高山植物群集ではポリネーターへの依存度は一般に低く、開花時期の季節性は全体的に希薄となり、社会性ハナバチを有する日本の高山植物群集とは異なったフェノロジー構造が期待される。 当該年度は初年度同様、日本(大雪山と立山)とNZ南島(オタゴ地方)の高山植物群集において、送粉系ネットワークと植物群集の開花構造調査、花形質の調査、花粉媒介昆虫の訪花頻度ならびに訪花行動観察を継続した。さらに、NZ南島のカンタベリー地方2山域でも新たに調査地を設定し、同様の調査を行った。日本の山岳域での調査は、6~9月にかけてそれぞれの山域で7~8回行った。NZ南島での調査は、12、1、2月にそれぞれ10~14日間行った。NZ南島の高山植物群集では、昨年同様、日本の高山植物群集に比べて個々の種の開花期間が長く、群落全体としては明瞭な開花ピークが見られなかった。また、訪花昆虫の季節性も日本に比べて不明瞭であることが明らかにされた。さらに、生育期間を通した気温変化等の気象条件が両地域で大きく異なっており、高山植物の開花時期に作用する自然選択圧が、両地域間で異なっていることが明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の調査地においては、複数年に渡るフェノロジーデータの収集、訪花昆虫調査データの収集により、送粉系を巡る生物間相互作用に季節特性を明らかにすることができ、研究成果の一部を学会発表や学術誌に公表することができた。海外の調査地においても、2カ所の調査地で2年分のデータ収集が終わり、さらに新たに2山域でフェノロジーデータを収集することができた。また、多くの植物の花形態や花色の計測が完了し、気温データの計測も順調に進んでおり、地域間の比較を行う情報が整ってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は本課題の最終年度であり、これまで蓄積されたデータ解析と、成果の公表を積極的に行う。野外調査は継続し、開花構造や訪花昆虫の季節活性・訪花習性について、年度間の変動解析を行う。3年間の調査研究の総括を行い、本課題の仮説である「開花フェノロジー構造が形成される過程で植物-昆虫相互作用が選択圧として作用し得るのか」を検証する。
|
Research Products
(6 results)