2012 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアで進行中のニジュウヤホシテントウの食草変換:その時間的・空間的動態
Project/Area Number |
23405012
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片倉 晴雄 北海道大学, -, 名誉教授 (40113542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤山 直之 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90360958)
加藤 徹 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80374198)
小路 晋作 金沢大学, 地域連携推進センター, 博士研究員 (10447683)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ニジュウヤホシテントウ / 東南アジア / 寄主特異性 / 生態的種分化 / 食草変換 |
Research Abstract |
本研究計画は、アジア熱帯域のニジュウヤホシテントウのナス科食からマメ科ムラサキチョウマメモドキ(以下、チョウマメと略)への食草の変換・拡大が時間的・空間的にどのような過程を経ながら進行しているかを解明する。計画2年度である今年度は2012年10月から2013年2月にかけて、計5名がのべ8ヶ月弱の期間インドネシア各地に赴き、現地の共同研究者と以下の研究を実施した。(1)バリ島、スラウェシ島南部、ボルネオ島(カリマンタン)東部・西部、スマトラ島中部、ジャワ島東部において2種食草の加害状況を調査し、成虫の食草選好性を調べ、さらにバリ島、ボゴール(ジャワ西部)、スラバヤ(ジャワ東部)、カリマンタン東部の集団について幼虫の飼育を行った。得られた結果を2011年度の結果とあわせると、スンダ陸塊に属するマレー半島南部、スマトラ島、ジャワ島、およびカリマンタン西部ではチョウマメの利用が広く見られ、テントウのチョウマメ利用能力も高いこと、一方、スンダ陸塊東部のカリマンタン東部、バリ島、およびスンダ陸塊の東に位置するスラウェシ島ではチョウマメ利用状況および利用能力に様々な段階がある事が浮かび上がった。(2)チョウマメ利用状況の標高による変化をボゴール周辺の標高250-1450m間の25地点で調査した。チョウマメは1000m以上の地点でも見られたが、テントウの利用は標高300m前後の低地に限られていた。(3)バリ島の集団を用い、ナス、チョウマメ上での成育能力に関して親子間の相関解析を実施した(結果は解析中)。(4)昨年度得られたサンプルのDNA解析から、チョウマメ利用が各地で独立に生じた事を示唆する結果が得られた。成果の一部は日本昆虫学会大会、日本生態学会大会およびカナダで開催された進化学の国際学術大会において発表し、さらに、年度末に成果発表と次年度計画立案のためのミーティングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、当初計画していたマレー半島域の調査を除きほぼ計画通りに実施することが出来た。海外共同研究者との協力も順調である。2年間の調査により、調査域におけるチョウマメ利用の空間的パタンの概要(スンダ陸塊西部・中央部における頻繁な利用と東部における様々な利用段階の存在)が浮かび上がってきた。又、ミトコンドリア遺伝子を用いた集団遺伝学的解析も順調に進んでおり、バリ、ジャワ、スマトラの代表集団のサンプルの解析を終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度も当初の計画(多地点での簡易食草選好テストと重点地域における時系列に沿った詳細な食性の調査の併用)を大きく変更する必要は無いと考えている。本年度はこれまで詳細な調査を行えなかったマレー半島南部で調査を実施するとともに、同一島内でチョウマメ利用に顕著な地理的変異が存在する事が明らかになったカリマンタンとスラウェシに重点を置いてデータの収集につとめる。又、遺伝子を用いた集団遺伝学解析をすすめ、チョウマメ利用の生じた回数、集団の移動分散、集団サイズの変化等を検討する。さらに、標高および都市化が食草利用に及ぼす影響の調査を重点地域において継続する。また、ニジュウヤホシテントウ以外の少なくとも2種のナス食マダラテントウにチョウマメを摂食する(成育は完了出来ない)能力が保持されている事が分かったので、未調査のナス食マダラテントウについて調査を進めるとともに、発端的なマメ食い能力を示した種とニジュウヤホシテントウの系統関係を分子マーカーを用いて明らかにする。交配実験による食草利用能力の遺伝的背景の推定については、2012年度の結果の解析を待って継続するかどうかを決定する。
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Research Products
(5 results)