2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアをもたない真核微生物群フォルニカータの多様性の解明
Project/Area Number |
23405013
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50208451)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
稲垣 祐司 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50387958)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 系統進化 / フォルニカータ / 嫌気真核微生物 |
Research Abstract |
真核生物の中には、嫌気適応によってミトコンドリア(mt)を二次的に失った生物群が多数存在し、系統樹上に散在している。これらの生物は退化(進化)型のmtと考えられるヒドロゲノソームやマイトソームなどのオルガネラをもっている。mtからこのようなオルガネラへの進化の変遷を辿ることは真核生物の細胞進化史を明らかにする上で重要であるが、それらの機能の詳細や普遍性・多様性に関する知見は極めて乏しい。本研究はmtをもたないものだけから構成される真核微生物のグループであるフォルニカータ生物群に注目し、その多様性と系統進化を解明することによりmt関連オルガネラの進化史研究の基盤構築を行なうことを目的としている。そのため、これまでにフォルニカータが検出されていない国内外の嫌気水圏環境を調査し、環境DNA解析や嫌気・微好気培養により新たなフォルニカータ生物を多数見出し、それらをもとに系統分類・進化学的な解析を行っている。 H23年度は、ノルウェーのフィヨルドや鹿児島県甑島をはじめいくつかの嫌気環境における生物調査を実施し、新奇のフォルニカータ生物やフォルニカータ以外のエクスカバータ生物が単離された。また、嫌気性ストラメのパイル生物をはじめ多様な系統群に属する新奇嫌気微生物も得られた。 昨年得られたものを含め培養株の継代・維持を行い、一部のものについては電顕観察を行った。また、昨年単離された自由生活性Entamoebaの網羅的発現遺伝子(EST)解析を行い、Entamoeba histolytica (赤痢アメーバ)のデータとの比較解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の調査においても多くの興味深い嫌気真核微生物が発見され、それらの解析も進んでいるため、順調に進展していると考えられる。 フォルニカータに関しては、これまでに得られたものが新奇とは考えられるものの既知のものと系統的に大きく離れたものがあまり見つかっていない。来年度、パラオ海水湖の再調査を実施し、昨年フォルニカータ生物を単離したサイトの新たなサンプルを得て多様な新種の単離を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した培養株の維持・継代を行い培養に関する方法論を検討する。9月にパラオ海水湖、7月に西表島の再調査を行い、新たなフォルニカータ生物やフォルニカータ以外の嫌気真核微生物の発見を目指す。また、これまでのパラオ、ノルウェー、甑島、西表島の各調査結果も含めて新奇生物の分子情報・形態情報に関する比較解析を行い論文を作成する。
|