2012 Fiscal Year Annual Research Report
ストライガ低感受性ソルガムの抵抗性・耐性機構の解明
Project/Area Number |
23405023
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉本 幸裕 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10243411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 知恵 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 研究員 (30403380)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ストライガ / ソルガム / イネ / 抵抗性 / 耐性 / 感受性 |
Research Abstract |
スーダンでストライガ(Striga hermonthica)および感受性のソルガム品種Dabarをポットで栽培し、寄生関係にある両植物のアブシジン酸(ABA)および土壌水分に対する応答を調査した。土壌乾燥処理と同様に、ABAの葉面散布処理に対してもストライガはソルガムに比べて気孔開度、気孔コンダクタンスおよび蒸散速度の低下が小さいことが確認された。また、出芽前および出芽後いずれのストライガ個体でも、湿潤条件、乾燥条件によらず、ABA濃度は宿主植物ソルガムに比べて約10倍高いことが判明した。 イネについては、前年度に行ったライゾトロンでの評価において、ストライガ抵抗性が高く、寄生したストライガを高頻度で枯死させたSATREPS1、この品種と同等の高いストライガ抵抗性を示したNERICA5とNERICA13、ストライガ感受性と判断されたNERICA4とNERICA18に、対照品種として日本晴を加えた計6品種のイネを用いてポット試験を行った。ストライガ種子16 mgを土壌9kgに混入した条件では、ポットあたりのストライガ出現数は、それぞれの品種で0, 0.5, 2.5, 6.7, 13.0および4.7に達した。ストライガを混入したポットでの各品種の穂重は、ストライガを混入していないポットに対して、それぞれ120, 85, 106, 25, 44および45%であった。以上の結果から、SATREPS1とNERICA5は、ライゾトロンまたはポットを用いた二つの調査において、安定したストライガ抵抗性を示した。NERICA13は、この2品種と比較するとストライガに寄生されやすかったが、寄生による穂重の低下が認められなかったことから、ストライガ耐性品種である可能性が示唆された。NERICA4とNERICA18の高いストライガ感受性もライゾトロンおよびポット内で確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストライガの被害を受けている代表的な作物であるソルガムの、寄生抵抗性、耐性、感受性の解析を目指して計画を立案した。材料は日本で収集できる品種に加えてスーダンの研究者から現地で感受性が異なると評価されている品種を譲り受けた。ストライガが接触する以前の抵抗性と考えられる発芽刺激物質の生産性には顕著な品種間差が見出されたが、ライゾトロンで評価した結果、寄生応答に関する品種間差は小さかった。一方、ストライガの寄生を受けることから我が国の食糧生産にとっても被害が危惧されるイネについて評価した結果、発芽刺激物質生産はいずれの品種もソルガムに比べて僅かであったが、寄生感受性には著しい差が見出された。そのため、ソルガムはストライガとの物質授受の解析に用い、感受性の解析にはイネを用いている。このうち、NERICA13の耐性については確認が必要なものの、SATREPS1とNERICA5の抵抗性、NERICA4とNERICA18の感受性はライゾトロンおよびポットで確認された。これらを材料に、ストライガ耐性、抵抗性、感受性機構の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
13CO2をソルガムに処理して同化された炭素のソルガムからストライガへの転流を調べたが、ストライガ個体中の13C/12C 比に13CO2処理の効果がほとんど認められなかった。ストライガはソルガムに遅れて出芽するため、通常の栽培では、両者の個体の大きさは著しく異なる。これまでの実験で、播種時期に関わらずストライガは8月中旬以降に出芽することを認めているので、今年度は、ソルガム幼苗期にストライガが出芽するように7月下旬および8月中旬に両種を播種する。さらに、ソルガム下位葉を切除して個体を小さくした上で、13CO2処理回数を増やす等、ストライガ個体での13Cの検出を高める工夫をして同化産物の転流を再調査する。また、ポットおよびライゾトロン法で栽培した寄生関係にあるソルガム―ストライガを用いて、ストライガにd6-ABAを処理し、ストライガからソルガムへABAが輸送されるかどうかを検討する。 これまでイネのストライガ感受性を評価する際にも、ソルガムに寄生したストライガ個体から得た種子を使用してきた。しかし、ストライガの寄生履歴が寄生率に影響するとの報告があるため、今年度は、イネの実験にはイネに寄生したストライガ個体から採取した種子を用いて、SATREPS1とNERICA5の抵抗性を確認する。さらに、土壌中のストライガ種子密度を増やした場合の、両品種の生育やストライガ出現数を確認する。これらの知見から、ストライガ抵抗性の崩壊の可能性を検討する。ストライガ耐性品種である可能性が示唆されたNERICA13、ストライガ感受性品種NERICA4、ストライガ抵抗性品種SATREPS1を、複数のストライガ種子密度で栽培し、ストライガ出現数が同程度であるときに、各品種の気孔応答をポロメーター法およびSUMP法で調査することで、NERICA13のストライガ耐性と気孔応答の関連を解析する。
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Research Products
(2 results)