2012 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林の孤立化は林冠木の枯死を招くか?異なる水利用体制化でのギャップ拡大機構
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23405024
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢本 正明 静岡大学, 農学部, 助教 (10507635)
米田 健 鹿児島大学, 農学部, 教授 (40110796)
小林 繁男 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (40353685)
内田 孝紀 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90325481)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 孤立化 / 林冠木衰退 / 風 / 樹冠構造 |
Research Abstract |
林冠分断化に伴う林冠木活性:ベトナム北部CucPhuong国立公園のギャップに面した個体の直径成長をデンドロメーターによりほぼ3か月ごとに計測し、閉鎖林冠内の林冠木と比較している。ギャップに隣接する個体の成長は大きく、分断化に伴う衰退は現れていない。一方でマレーシアの択伐二次林では択伐後のギャップに隣接する個体の有意な健全度の低下が観察された。健全度の低下と林冠個体の枯死にも有意な関係があることから、ギャップ構造と林冠個体の枯死の関連が推定された。 熱帯樹木の林冠構造:80個体の熱帯樹木の樹冠構造および枝葉の受講特性を測定した。この測定結果をデータベース化して林冠地形モデルに組み込むことを狙いとする。 熱帯樹木の風害攪乱抵抗性:Acacia hybrid Eucariptus urophylla Pinus caribeaの根返り・幹折れ最大モーメントを測定した。Acacia hybridは他の2種に比較して根返り個体が多かった。一方Eucariptusは太い直根が折れることが多かった。モーメントと個体サイズとの関係はこれまで測定したParashoreaやPometiaあるいは日本の針葉樹と大きい違いは見られなかった。 孤立化に伴う生理的衰退: 孤立化のインパクトが顕著に表れやすい日本のヒノキをモデル植物とした。この樹種は大きい疎開によって枯死しやすいことがわかっているが、その枯死にいたるメカニズムは不明である。この個体の樹液流速度、AE発生率および枝径の変化による水ポテンシャルの動態を調べた。林冠閉鎖から解放された個体でAEの発生率が大きく高まる現象と樹液流速の減速が見られた。すなわち孤立個体の通水コンダクタンスが低下し樹木の水ストレスを増加させている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進んでいる。当初ベトナム樹木の生理的評価を継続的に測定する計画であったが、現時点で顕著な衰退が見られないことと、生理能力を継続測定できる現地スタッフが不在となったため、ベトナムでの孤立化に伴う生理ストレス評価の計画を変更し、生理的インパクトについては、よりインパクトを受けやすい日本でのヒノキの測定に集中することとした。 現地の衰退度測定は順調に進行中で、マレーシアでの孤立化に伴う衰退現象が確認された。ベトナムにおける継続測定も順調に進んでいる。 林冠における風動態モデルを作成できた。ギャップ構造に伴い風の挙動が変化する現象を再現できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナム、マレーシア、タイの樹木の着葉構造について詳細に解析しデータベースを構築する。この着葉構造をもとに林冠地形を作成し、CFDモデルトリンクする。 またギャップ地での葉分布構造を明らかにして、特にマレーシア試験地での個体枯死を予測するパラメータとして葉分布のクラスター化を定量化する。 孤立化のインパクトを受けやすいヒノキをモデル植物として、孤立に伴う環境変動と生理ストレスの生じるメカニズムを遺伝子発現による分子生物学的アプローチと生理生態モニタリングから明らかにする。
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