2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯泥炭湿地における環境農業-サゴヤシ栽培の炭素シンク機能と生産技術の改善
Project/Area Number |
23405047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Boundary agriculture
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 彰 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50231098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 豊 山形大学, 農学部, 教授 (90005661)
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Keywords | 環境調和型農林水産 / 二酸化炭素排出削減 / 環境材料 / 腐植物質 / 熱帯低湿地 / 炭素循環 / 熱帯農業 |
Research Abstract |
サゴヤシ(Metroxylon sagu Rottb.)は熱帯泥炭湿地の高地下水位下で生育できる希有な高デンプン生産植物であり、旺盛に光合成を行い、定期的に巨大葉が落葉することから、土壌にCを蓄積している可能性が高い。本研究は、マレーシア・サラワク州/ムカを対象地域とし、泥炭湿地におけるサゴヤシ栽培系がCシンクとして機能することを立証してその環境農業としての価値を明確にするとともにサゴヤシによる窒素固定を考慮した合理的窒素施用条件、不安定な初期生育を解消するための肥培管理法、および泥炭土壌への吸着が強く容易に不可給化する微量元素の効率的施用技術を確立し、安定した生産量を保証することを目的とする。初年度は現地農家のサゴヤシ2圃場(SG1、SG3)を借り受け、2度(9月、3月)のサゴヤシ生育調査(幹高、幹径、葉数、葉面積)と平均C、N含量を算出するための試料採取を行った。サゴヤシの幹高は6ヶ月間にSG1で0.9±0.3m、SG3で0.7±0.3m成長した。また、サゴヤシリターの分解速度を把握するためのプロットの設置(9月)、自動土壌呼吸測定システムの設置(3月)および雑草バイオマス量測定のための2×2mのプロットの設置(9月、3月)を行った。プロット内の雑草生体量は80~99%がタマシダで、SG3では雨季乾季とも平均165gm2であった。また、泥炭として蓄積しているC量を求めるために泥炭層の厚さ分布を10m間隔で調べた。その結果、SG1は15~45cm厚のShallow peat、SG3は85~310cm厚のDeep peatであった。サゴヤシ移植1年目の別圃場(SG2)で、窒素固定量を推定するための窒素自然安定同位体比(δ^<15>N)の測定と施肥N動態解析のための^<15>N標識尿素の施用を行った。δ^<15>Nは0.4~6.6‰であった。'
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象圃場の地下水位モニタリングにより、自動土壌呼吸測定装置の雨季前の設置は水没の危険があることが分かったため、設置を半年間遅らせた。また、定着率向上試験はムカにおける移植の現状調査(アンケート)から行っているため、試験の開始が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年開始したサゴヤシの生育調査、リターの分解調査、土壌呼吸の観測、雑草バイオマスの調査と施肥Nの動態、δ^<15>Nの測定を継続し、データの収集・解析につとめる。ただし、雨季の土壌呼吸観測については装置が水に弱いことから回避する予定である。また、微量元素の施用効率を改善するためのフルポ酸との錯形成試験を開始する。
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