2011 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの更年期女性の糖尿病と心血管系疾患のリスク因子としてのVEGFの有用性
Project/Area Number |
23406037
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
木村 壮介 独立行政法人国立国際医療研究センター, センター病院, 病院長 (30118450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JESMIN Subrina 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所・遺伝子治療開発室, 室長 (60374261)
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Keywords | Post menopause / Diabetes / Biomarker / Risk prediction / Clinical validation / Japan / Bangladesh / Innovation |
Research Abstract |
研究の目的 バングラディッシュおよび日本の閉経後女性を対象とし、糖尿病とその臓器合併症のリスク予測および重症度のバイオマーカーとしての血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の臨床的有用性を証明する。1)糖尿病発症予測因子としての流血中VEGF値(変化)の有用性を検証する、コホート研究。2)糖尿病とその心血管系合併症の重症度とVEGF発現レベルの関係の研究。3)閉経後女性における正常VEGF値(性別、年齢や民族ごと)の設定。 本年度(~平成25年3月31目)の研究実施計画 下記の詳細に基づき、プロトコールの確認、倫理委員会関連の確認、グラミン健康財団(Grameen Health care Trust),Health and Disease Research Center fsemeor Rural People(HDRCRP),独立行政法人国立国際医療研究センター(National Center for Global health and medicine:NCGM)での研究業務の分担の確認等を行う。バングラデシュ国における調査情報資料と検体収集、日本への一部検体輸送、HDRCRPおよびNCGMでの測定解析作業を開始する。対象地域にて糖尿病の診断、採血等の検体収集、VEGFを含めた各種項目の測定(詳細は下記)を行う。 1.対象(1)バングラデシュ国農村部および日本人の閉経後女性。(2)対象地域はバングラデシュ4地域(Rajshahi,Dhaka,Naogoan,and Shirajgonj等)および日本3地域(東京、北海道、茨城)にて開始予定。2.研究方法(1)研究1:測定対象群における基礎的測定項目やVEGF値の基礎的統計学的性状の評価を行う。これらを年齢、性別、民族差等ごとに評価/解析する。標本数=1000/国。それらの結果はその後の統計学的解析の信頼性、特異性、感度、妥当性などを設定/検証するために重要。合わせて倫理的/法律的/社会的実現性や継続性の評価を行う。(2)研究2:ケースコントロール(症例対照)研究。対象年齢は40~70歳の閉経後女性。糖尿病患者350名、年齢をマッチさせた健常者350名の2群(power=90%,alpha;0.05).閉経後状態は、55歳未満では1年間以上、55歳以上では6か月以上、月経がないこと(Jesmin,Kimura et al,unpublished observation,World Health Care Congress,2010)。(3)研究3:前向きコホート研究の継続。開始時には糖尿病、心血管系疾患のいずれも有しない健常者。標本数1000,power=90%,alpha=0.05,観察期間:2011~2017.観察は6か月ごと。糖尿病、悪性腫瘍を有しないこと、及び性ホルモン補充療法を受けていないことの確認。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バングラデシュ国の閉経後の女性を対象として、そのVEGF発現状態について研究した。 バングラデシュ国農村部の女性におけるVEGF発現レベルは、閉経前女性群に比較して、閉経後女性群では高値であった(閉経前 vs.閉経後:457.9±11.5 vs.598.1±18.0pg/ml)。我我の動物実験結果と同様、内分泌環境が閉経に進むと、ヒトにおいてもVEGF発現レベルは上昇する事が判明した。しかし、糖尿病の有無の観点では、健常女性に比べて、糖尿病を有する女性では、血清VEGFレベルは低値であった。ケースコントロール研究(n=220)でも、糖尿病を有する閉経後女性の血中VEGF値は、非糖尿病の閉経後女性よりも低値であった。VEGF値が低いほど、糖尿病発症リスク(odds ratio)が高い事が判った。バングラデシュにおいて、前向きコホート研究を開始した。今後、血清VEGF値を継続的に測定する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
閉経後の女性において、VEGF発現レベル(遺伝子および表現型の両方)は糖尿病の発症リスク因子として重要である、との平成24年度の研究成果は、我我の以前の予備研究結果とも一致していた。VEGF発現レベルは、糖尿病のみならず、心血管系疾患発症のリスクとしても、更にそれらの治療的介入の糸口としても重要であると、我我は仮定している。糖尿病の発症予測におけるバイオマーカーとして、VEGFは重要である事を検証する計画である。同時に、VEGFは、閉経後の女性における心血管系疾患の疾患感受性の評価にも有用である可能性、および、閉経後の糖尿病患者における心血管系疾患に対する、非エストロゲン性治療薬の開発に関連する潜在的重要性において、閉経後女性の保健医療に広く貢献し、アジアから世界に拡大しうる研究へと発展させたい。
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Research Products
(32 results)