2011 Fiscal Year Research-status Report
不正者全員を特定可能な電子指紋符号の構成法とその性能解析
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23500004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古賀 弘樹 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20272388)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電子指紋符号 / 電子透かし / 秘密分散法 / 情報理論 / 情報セキュリティ |
Research Abstract |
電子指紋符号は,有償テレビ放送などライセンスのあるディジタルコンテンツの不正配信を抑止するための技術である.電子指紋符号では,購入するユーザーごとに異なるID情報を符号化してあらかじめ埋め込んでコンテンツを配信する.また,悪意のある複数のユーザのグループが結託して不正なコンテンツ(海賊版)を生成する状況を考え,ある緩やかな制限のもとで,そのグループが最適な形でコンテンツを上書きして海賊版を生成した場合でも,その生成に関わったユーザをできる限り正確に特定できることが望ましい.本研究では,この目的のため,その海賊版を生成することができるユーザのグループを特徴づけ,海賊版の生成に関わったユーザをすべて特定することも可能な電子指紋符号を構成することを目的としている.また,不正者を特定する問題は秘密分散法をして知られる情報セキュリティ技術にも表れるので,両者の関係を明らかにすることも目的としている. 本年度で得られた成果は次の3点である.(1) 確率的に生成される電子指紋符号において,不正ユーザが2名のとき,(i) 2名とも特定できる確率が1に近く,(ii) 無実のユーザが誤って特定できる確率が0に近い, ことを要請した場合のユーザー数の下界を求めたこと.この結果は不正ユーザ数が2以上の場合にも拡張でき,また典型系列やタイプ理論など情報理論の基本的な道具立てを用いて証明できる.(2) 不正者がAND攻撃を用いて海賊版を生成する確率的な電子指紋符号において,場合において,不正ユーザ全員を特定することを要請した場合の最大のユーザ数の下界を求めた.(3) (k,n)しきい値法として知られる秘密分散法において,正規のユーザになりすましを働く不正者を考えたときの分散情報のサイズおよびなりすましの成功確率の上界と下界を求めた.上界と下界は秘密情報が一様分布に従って生成される場合にはタイトになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り,電子指紋符号自体に関する新しい知見が2つ,秘密分散法に関する新しい知見が1つ得られており,研究はおおむね順調であると考える.特に上記(1),(2)の結果はより一般の場合に拡張可能であり,今後はより強力な結果が得られることが期待できる
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は次の2点に重点を置いて研究を進める.(A) 今年度得られた結果の拡張とまとめ:今年度の結果(1)では,不正を働くユーザ数は2と仮定していた.これは証明の記述を容易にするための仮定であるので,今後は一般のb人として研究を進め,さらに強力な結果を得る予定である.また,今年度の成果より,ある状況のもとでは,電子指紋符号が利用できるユーザ数を求めることは,相互情報量のミニマックス問題としてゲーム理論的に捉えられることがわかったので,この方向で更なる具体的な成果が得られるかどうか調べたい.(B) 有限射影平面を用いた電子指紋符号の性質:有限射影平面に基づく電子指紋符号は,不正者の攻撃に対する耐性が解析しやすいという特徴をもつ.すでに研究代表者は,有限射影平面に基づく電子指紋符号において,b人のユーザが不正を働いたときにそのb人全員を特定するための十分条件を明らかにしている.次年度は,少ない計算量で不正者の一部を求めるためのアルゴリズムを構成し,その性能を評価することを考えている.また,b人全員を特定できるための必要条件,および,不正者候補の極小集合の特徴づけについても,数式処理ソフトウェアを補助的に用いながら,理論的に考察したい.有限射影平面に基づく符号以外の符号の結託耐性も併せて考えたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度得られた結果を,論文誌・国際会議等で発表して国内外の研究者に公知することは重要である.論文印刷費用として10万,国際会議のための旅費として35万,参加費として5万を使用予定である. また,次年度得られる新たな研究成果を発表し,国内の研究者と議論するための旅費として15万,会議等の参加費として5万を使用予定である. さらに,発表用および研究打合せのためのノートパソコンを購入する予定であり,この費用として15万を見込んでいる.研究環境を整備するために購入する計算機のソフトウェアとして10万,バックアップ用のハードディスクやネットワーク機器などの計算機消耗品として5万を見込んでいる. 平成23年度から16,099円を繰り越すことになった.これは本研究における残額の有効な使用法をなかなか見いだせなかったために発生した額である.この額で平成24年度にホームページ作成ソフトウェアを購入し,ホームページを通した研究成果の広報を行う予定である.
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Research Products
(3 results)