2012 Fiscal Year Research-status Report
不正者全員を特定可能な電子指紋符号の構成法とその性能解析
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23500004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古賀 弘樹 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20272388)
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Keywords | 電子指紋符号 / 著作権保護 / 不正者特定 / 符号化定理 / 容量 |
Research Abstract |
電子指紋符号は,ライセンスのあるディジタルコンテンツの海賊版の流出を防ぐための技術である.通常,電子指紋符号は,ライセンスを購入するユーザと一対一に対応する符号語を,ディジタルコンテンツ内に秘密裏に埋め込んでおく.ディジタルコンテンツが海賊版として不正に流出したとき,配布者は流出したコンテンツ内に埋め込まれている符号語を抽出し,不正配信を行ったユーザを特定する.本研究では,二人以上のユーザが結託して海賊版コンテンツを生成し不正配信を行ったときにも,海賊版の生成に関わったユーザ全員を特定する電子指紋符号の構成である. 今年度の成果は,海賊版の生成に関わったユーザの数の上界がわかっているときに,ある条件のもとで,電子指紋符号が適用可能なユーザ数についての符号化定理を導出したことである.特に,電子指紋符号の符号語超を n とするとき,電子指紋符号が適用可能なユーザ数は n の指数関数のオーダで増加し,その指数部の n の係数(電子指紋符号の容量)を,厳密な形で具体的に明らかにした.容量そのものはこれまでにも知られている形と同じ形はあるが,不正ユーザ数の上界だけがわかっているという問題設定のもとで,符号化定理が厳密に成り立つための条件を明確にしたという意義は大きい.本研究の成果は平成25年5月の研究会で報告する予定である. また,今年度は電子指紋符号と関連の深い問題である,不正者が存在する秘密分散法についても新しい成果を得た.秘密分散法の場合は,1つの秘密情報を複数のユーザ間で分散共有するが,正規のユーザになりすます不正者がいる状況で,その不正者を検出する方式を考察した.実際,正規ユーザがもつシェアが相関をもつようにすれば,不正者検出に失敗する確率は指数関数的に小さくなることを示すことができた.この結果は,ハワイで行われた国際会議 ISITA 2012 において発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子指紋符号の符号化定理は,相互情報量の minimax 問題を含むなど数学的にも難解な部分をいくつか含んでいる.実際,新しく導出した符号化定理も,海賊版を生成する不正者の数が既知であれば理論的な難しさをある程度回避できるが,不正者数の上界だけを与えるという定式化にしたかったので,理論的な困難さに直面することとなり,結果の導出まで時間がかかってしまった. また,電子指紋符号の他の最新研究は,雑誌論文という形までなっているものは少なく,国際会議論文として発表されているか,またはプレプリントサーバに論文が置かれている場合が多い.論文に第三者の審査の目があまり通っていないので一概に読みにくく,結果の比較の面で困難さを伴っている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はまず,平成24年度に得られた結果の細部をさらに詰めて,論文化して公開することを目標とする.平成24年度に導出したユーザ数に関する符号化定理において,容量を達成する電子指紋符号が作れるためにはある種の条件が必要になっていた.この条件をさらに緩くできるかどうかを議論した後,論文を執筆し,論文誌または国際会議へ投稿することを考えている. また,電子指紋符号に関する既存研究では,符号器側が補助的な確率変数を鍵として利用できる状況を考えている場合がある.ところが,これまでに得られた結果から,補助確率変数が離散的な場合は,容量は補助確率変数がない場合の方が大きいことを容易に示せる.すなわち,補助確率変数が真に有効なのはそれが連続的な場合に限られ,連続的な補助確率変数を使うことの妥当性および有効性を示すことを考えたい. さらに,電子指紋符号と密接な関連のある,不正者が存在する秘密分散法との関連についても引き続き調査を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上の研究の推進方策でも述べたように,平成25年度はこれまでに得られた研究のさらなる発展および公表を目指す.成果を国際会議で発表するための費用として30万,国内会議での発表のために30万を計上する.会議の参加費として合計15万を見込んでいる.また,成果を雑誌論文に掲載するときに必要となる論文の別刷代として10万を予定している. また,平成24年度に導出した符号化定理について,符号語長が有限の場合の性能を調べるために,計算機を用いたシミュレーションを行うことを考えている.計算機の購入費用として15万,ソフトウェア購入のための代金,およびハードディスク等の計算機消耗品として10万を計上している.
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Research Products
(4 results)