2011 Fiscal Year Research-status Report
離散最適化問題の計算モデルと高品質アルゴリズム設計
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23500020
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮野 英次 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (10284548)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 離散最適化問題 / オフライン最適化問題 / オンライン最適化問題 / 近似アルゴリズム / 近似不可能性 / 正則誘導連結部分グラフ抽出問題 / OVSF符号割当最適化問題 / グラフ有向化最適化問題 |
Research Abstract |
本研究の目的は,以下の2種類の困難な離散最適化問題を対象とした計算モデルの構築,計算理論的解析に裏付けされた解精度保証のあるアルゴリズム設計手法の開発,及び問題自体が有する解精度の意味での困難性の解明を行うことである.NP困難問題と呼ばれる多項式時間で最適な解を求めるためのアルゴリズムを持たないであろうと予想されている最適化問題.入力インスタンスの情報の一部が与えられていない(もしくは利用できない)最適化問題,すなわち,情報が不完全な形で与えられるため最適解を求めることが困難な最適化問題.今年度の主な研究成果は以下である. 1.頂点数を最大とする正則誘導連結部分グラフを求める最適化問題について,次数が3以上の正則誘導連結部分グラフを求める問題が計算困難となること,また,近似計算の意味でも困難であることを示した. 2.辺重みつき無向グラフが与えられ,重み付き出次数の最大値を最小化するように辺の向きを求める最適化問題について,グラフクラスに対する計算容易性と困難性を示した.また,最小重み付き出次数を最大化するような辺の向きを求める最適化問題については,辺重みを{1,2}に限定し,かつ各頂点の(重みなし)次数が高々3,さらにグラフが平面二部であるような場合でも計算困難であること,近似精度が2倍程度悪くなるようなアルゴリズムの設計も難しいことを示した.次数上下界制約付きグラフ向き付けについて,次数制約を満たさない場合のペナルティ関数値が最小になるような問題についての計算容易性と困難性を示した. 3.オンラインOVSF符号割当問題のリソース量と競合精度の改善を行った.それぞれの結果は,国際ジャーナル誌,国際会議,国内研究会で公表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的,実施計画は以下であった.1.オフライン情報モデルにおける近似アルゴリズムの設計,近似精度の解明,オンライン情報モデルにおける競合アルゴリズムの設計,競合精度の限界解明,数学的なツールに関する結果と手法の調査.2.既にオフライン情報モデルとして定式化ができている最大隣接集合問題,最適部分グラフ抽出問題の検討.3.オンラインOVSF符号割当問題の検討.4.国内各種研究会,AAAC年次総会,国際会議,国際論文誌での研究成果の公表. 1については,オフライン情報モデルおよびオンライン情報モデルの結果と手法の調査を十分に行えることができた.2のオフライン最適化問題については,最大隣接集合問題に関してAAAC年次総会での研究成果の公表,最適部分グラフ抽出問題に関しては,国内研究会および国際会議での研究成果の公表を行った.論文誌への投稿準備も行っている.さらに,グラフ有向化最適化問題についても計算複雑さ,近似上界および近似下界に関する研究成果を得ることができた.3のオンラインOVSF符号割当問題については,リソース量と競合精度の改善を行い,米国での国際会議で研究成果の公表を行った.このように,当初の計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで順調に進んできており,これまでと同様の手法と手順で研究目標の達成を目指す.近似精度,競合精度の上界と下界に存在するギャップは徐々に小さくしていくしかないと思われるため,近似アルゴリズム,競合アルゴリズムの改良と近似下界,競合下界の証明法の改良を繰り返しながら研究を進めていく.今後も,米国における国際会議STOC,FOCS,及びSODA,欧州における国際会議ICALP及びESAを中心にる近似アルゴリズムの設計,近似精度の解明,オンライン情報モデルにおける競合アルゴリズムの設計,競合精度の限界解明,数学的なツールに関する調査を行っていく.文献調査に加えて,情報処理学会アルゴリズム研究会,電子情報通信学会コンピュテーション研究会などの国内各種研究会に参加し,本研究課題の目標を達成するための有益な情報を得る.オフライン情報モデルについては,固定パラメータに対する計算困難性と計算容易性に関する検討を始める.オンラインOVSF符号割当問題については,リソース量と競合精度のさらなる改善を行っていく.各段階で得られた結果については,国内研究会,学会総合大会,国際会議などで随時公表を行っていき,他の研究機関研究者からのフィードバックを得ることで,手法の再検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度使用予定額の35万円程度を次年度に繰り越すことになった.これは,平成24年1月~2月に豪州で開催された第18回CATSシンポジウム(Computing: the Australasian Theory Symposium)に参加して,研究成果の公表を行う予定であったが,体調不良のために参加することができなかったこと,その時点で平成24年度にギリシャで開催される国際会議での研究成果の公表が決まっていたため,旅費として使用する予定であった金額を繰り越すことになったからである. 平成24年度は,繰り越し分と含めて145万円程度の研究費の使用を予定している.その内訳は,設備備品費として25万円,消耗品費として5万円,国内旅費として25万円,外国旅費として70万円,謝金等として12万円,その他として8万円である.設備備品費によりPCサーバー,ノートPC,アルゴリズム論や計算量理論に関する図書を購入する.メモリーやソフトウェアなどのPC関連の消耗品の購入も計画している.国内旅費により北海道,関東,関西で開催される計算に関する研究会,学会への参加を予定している.現時点で中国で開催されるAAAC年次総会,カナダで開催される国際会議(第6回 Annual International Conference on Combinatorial Optimization and Applications)への参加が決まっており,また,他の国際会議での研究成果の公表を計画しているため外国旅費が必要となる.大学院生による研究補助,専門知識の提供のために125時間分の謝金,研究成果を国際ジャーナル誌に投稿するための論文投稿費用も必要となる.
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Research Products
(20 results)