2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500025
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 洋祐 東京理科大学, 理学部, 教授 (50257820)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ブーリアン・グレブナー基底 |
Research Abstract |
本質的に整数演算を含まないような組み合わせ問題の解法に焦点をしぼり、その解法のために必要な、可換代数の理論について、ブーリアン・グレブナー基底を中心に研究をおこなった。通常の体を係数とする多項式環における消去イデアルの計算を、グレブナー基底を用いておこなう場合、求めたい消去イデアルの変数に対して、それぞれ異なる項順序にたいするグレブナー基底を計算する必要がある。これにたいし、ブール多項式環においては、どのような項順序にたいしても、ブーリアン・グレブナー基底を一つ求めれば、それからただちにすべての変数にたいする消去イデアルが計算できることを証明した。これにより、ブーリアン・グレブナー基底が効率的な可換代数の手法であることが示された。計算機代数においてグレブナー基底と共に最重要アルゴリズムの一つであるトライアンギュラーセットのアルゴリズムに基づく方法では、このような計算は不可能なので、ブーリアン・グレブナー基底が現時点では最適な可換代数の手法であるといえることも判明した。計算機代数の分野では、理論の構築だけでは研究は不完全で、その有効性を実証するためにプロトタイププログラムを作成する必要がある。検証プログラムの実装は、数式処理システムRisa/Asir上でおこなった。これを利用した、ブーリアン・グレブナー基底の計算だけを使った数独解法プログラムが公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本質的に整数演算を含まないような組み合わせ問題の可換代数的解法として、ブーリアン・グレブナー基底による解法が最適な可換代数の手法であることを保証する定理を証明した。数式処理システムRisa/Asirを用いて、プロトタイププログラムを作成し、ブーリアン・グレブナー基底による解法の有効性を実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、整数演算を本質的に含むような集合制約の中で、最も基本的な制約である一番外側に存在限量子記号のみが現れる制約について有効な可換代数的アルゴリズムの研究をおこなう。次に、一般の制約について可換代数的アルゴリズムの詳細な研究を行う。二種類の限量子記号が入れ子になって多数現れる場合は、実数制約の限量子消去法と同様にすべての制約を解くソルバーを構築することは実用的ではないと考えられる。実際の工学等の現場で解法が必要とされている問題のタイプを調査し、重要と思われる形の制約をいくつか抽出し、それらに特化したアルゴリズムの構築およびその有効性を実証するためのプロトタイププログラムの実装をおこなう予定でいる。本研究で構築するアルゴリズムには並列化可能な部分が非常にたくさん含まれているので、分散あるいは並列アルゴリズムを構築することは、高速なプログラムを実現させるための一つの方法である。一番外側に存在限量子記号のみが現れる制約に焦点を絞り、並列アルゴリズムの構築とプロトタイププログラムの作成も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に関する成果を発表するために、海外および国内で開催される研究会議に多数参加する予定でいる。そのための旅費として研究費を使用する予定でいる。
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Research Products
(2 results)