2011 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク省電力化を意識したトランスポートプロトコルの検討と実証実験
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23500091
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
川原 憲治 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40273859)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Green ICT / TE(Traffic Engineering) / 媒介中心性 / 最小経路木 / 省電力経路制御 / 省電力TCP |
Research Abstract |
ネットワークにおけるルータやスイッチ等の機器単体の省電力化はリンクインターフェースの低転送帯域設定や通電OFFがあり、ネットワークワイドで省電力化を行う場合は送受信端末間に複数の転送経路が存在することからトラヒック量の多寡に応じた経路集約・分散が効果的である。そのため本研究では、省電力化を意識したトラヒックエンジニアリング(TE)を実施するにあたり、1)前者を目的とした時間的なTE、2)後者を実現する空間的なTE、ならびに、3)両者を有効に連携する時間・空間的なTEについて具体的な手法の提案とその効果の理論/シミュレーション/実験による検証を行う。今年度の成果は以下の通りである。1)時間的な省電力TE:トラヒック転送プロトコルであるTCPでは、信頼性を提供するために、連続して転送するトラヒック量をネットワークの状況に応じて制御するが、その際の転送タイミングを確率的に遅延させることにより、ネットワーク機器の通電OFF期間を意図的に増加させる方式を提案し、移行確率や移行時間による影響について基本的な特性について評価した。2)空間的な省電力TE:省電力経路制御においては、通電OFFにするルータ/リンクの選択が非常に重要となるが、その方式として、a)「リンク重要度」(リンクに対する媒介中心性)、b)「複数ルータの最小経路木の組み合わせ」による集中的に選択する方式を提案し、省電力効果と転送性能の関係について明らかにした。3)時間・空間的な省電力TE:既存の省電力経路制御方式を調査し、小規模なテストベッドネットワークを構築して、それらを実装して性能比較を行い問題点を示した。なお、各ルータにおける経路変更タイミングは明らかではなかったので、具体的な経路集約・分散アルゴリズムを提案し、その有効性についてシミュレーションにより調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ネットワークアーキテクチャにおける各階層において、省電力化を意識した機能の拡張を行うことを目的としている。具体的には、Layer1(物理層)において機器の利用状況に応じた消費電力量制御、Layer2(データリンク層)における転送トラヒック量に応じたリンク転送速度制御を基本として、Layer3(ネットワーク層)における省電力経路制御、ならびに、Layer4(トランスポート層)における省電力TCPの検討を行う。今年度は、前者に関しては、既存の省電力経路制御手法の調査と比較実験に加えて、具体的な経路集約・分散アルゴリズムの検討と、通電OFF対象機器の選択手法の提案を行い、後者については、既存TCPにおけるリンク転送速度制御と転送性能の関係評価に加えて、具体的に転送機構を拡張することにより、省電力TCPの基本特性の評価にまで着手して、それぞれを学会において公表している。よって、計画以上に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は各手法の提案と基本的な特性評価が主であったため、今年度はそれを踏まえて、実現可能な手法への改良を実施する予定である。具体的に時間的省電力TEにおけるTCPのトラヒック転送移行については、中継ルータ/リンクの利用状況に基づく移行時間の調整が考えられる。空間的省電力TEにおいては、通電OFF機器の選択方法を自律分散的に行うような変更が必要であり、また、トラヒック増加時の復旧方法についても検討しなくてはならない。また、実装実験においては、今年度は既に所有していた機器のみの小規模な環境における評価を通した手法の提案と基本特性評価を優先させたため、当初テストベッドネットワーク構築用に計上していたPC群の購入を見合わせ、次年度以降に大規模化することを目指して、使用予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の剰余研究費と次年度の研究費を合算することにより、次年度は主として、大規模テストベッドネットワーク環境の構築のためのPC群やネットワークエミュレータの購入、ならびに、実データ取得、解析のための大規模ファイルサーバの購入に充当する。加えて成果発表のための国際会議1件、国内研究会など3件程度を予定し、その旅費や参加費としても利用する。
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