2012 Fiscal Year Research-status Report
無線マルチホップネットワークの弱い層間連携による高効率通信技術
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23500092
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
北須賀 輝明 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70343332)
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Keywords | モバイルネットワーク / 無線通信 / 情報システム / 分散アルゴリズム / 確率的手法 |
Research Abstract |
MANET (mobile ad-hoc network)やVANET (vehicular ad-hoc network)などの移動無線端末で構成される無線マルチホップネットワークは,無線媒体を用いた通信であり,端末がそれぞれ任意に移動することからリンク品質の時間変化が大きい.本年度は,1.これまでに提案した無線マルチホップネットワークにおける経路近傍端末による確率的再送制御方式について,既存の経路制御プロトコル二つ(AODVとAOMDV)と組み合わせた場合の性能を,車車間通信の移動モデルで評価した.2.単一フロー内での干渉を低減すべく送信周期の調整による無線マルチホップネットワーク上でのTCPの輻輳の緩和についても検討した. 1.経路近傍端末による確率的再送制御方式は,データリンク層で行われる通常の再送制御に加えて,そのリンクの送信端末と受信端末のどちらにも近い端末が送信端末より先に再送する方式である.この再送制御方式を,経路制御プロトコルAODV(オンデマンドに経路を構築するもの)とAOMDV(複数経路を同時に構築するするようにAODVを拡張したもの)のそれぞれと組み合わせた場合について,車車間通信の移動モデルで評価した.最高移動速度を10m/sから30m/s(時速36kmから108km)の間で変化させたところ,確率的再送制御を加えることで,通常の再送制御と比べて3%から6%程度パケット到達率を改善できることが確認された. 2.マルチホップネットワークでは,経路上の連続するリンク間で同一のTCPフロー(UDPも同様)内のパケットが互いに衝突することがある.このようなフロー内での干渉を低減すべくTCPパケットをデータリンク層で転送する際に遅延を挿入する方法について検討をはじめた.遅延を挿入することで,TCPのウィンドウサイズの平均が増加させられることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データリンク層と経路制御層との連携に関する検討を今後も続けていく必要がある.また,確率的再送制御方式について関連する研究者からあまりよい評価を得られておらず,どのような新規性を主張するかを再検討するとともに,有用性をより明確に示す必要がある.新たに検討をはじめたフロー内干渉を低減するための遅延挿入は,検討をはじめたばかりで,この有用性もこれから明らかにしていく.
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Strategy for Future Research Activity |
既存の経路制御プロトコルやデータリンク層の設計を十分に尊重しつつ,弱い層間連携によって,無線マルチホップネットワークの高効率通信を実現するという目的に変更はない.経路近傍端末による確率的再送制御方式と,データリンク層での遅延挿入の二つの方法で,無線マルチホップネットワークの高効率通信を目指す.前者の再送制御方式や無線マルチホップネットワークの近傍端末発見(NHDP)では,周期的にビーコンを各端末が送信するが,このビーコンが背景トラフィックとなって,TCPやUDPでのデータ通信の送信ペースを乱す要因となっていると思われる.この点にも配慮しながら,上記の二つの方法を改良する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表旅費にあてるほか,シミュレーション用計算機とシミュレーション結果の格納のための外部記憶装置,実験用のモバイル端末の購入にあてる計画である.
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