2012 Fiscal Year Research-status Report
推論攻撃を考慮した位置情報プライバシー保護技術の研究
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23500107
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
Principal Investigator |
南 和宏 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10579410)
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Keywords | 位置情報 / プライバシー保護データ公開 / アクセスコントロール |
Research Abstract |
本年度も引き続きモバイルユーザーの移動パターンを確率的にモデル化したマルコフモデルを用いた推論攻撃に対する防御策、及びその実証的評価を行った。昨年度明らかになったのは、位置情報へのアクセス要求が拒否されるという事実からそのユーザーの移動先に関する情報が漏洩してしまうという問題であった。我々はその推論プロセスを数理的なアルゴリズムとして表現し、その正確性に関する理論的な分析を行った。またそのアルゴリズムを実装し、マイクロソフト北京研究所が公開している位置情報のデータセットを用いて、その推論攻撃の能力をオリジナルのマルコフモデルによる攻撃と比較することでリスクの定量化を行った。また位置情報データの安全なデータ公開に関して、従来の匿名化を発展させた動的な仮名化の手法を考案した。この仮名化の手法は個人のプライバシーを保護しながら各ユーザーの経路情報も合わせて公開できるという点で従来の匿名化の手法よりも優れている。主要なアイデアは複数のユーザーが同一の場所、時間に出会った場合にランダムにそれらのユーザーの仮名を交換し、全体の軌跡の曖昧化を行う点にある。ただし攻撃者は、ターゲットとなるユーザーの移動に関して部分的な知識を持つ可能性があるので、そのような攻撃者に対して仮名化されたデータセットの安全性を検証するアルゴリズムを開発し、その正当性及び完全性の証明を行った。また実際のそのアルゴリズムを実装し、基本的な実証実験への準備を終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった要求リクエストの拒否という情報を用いた推論攻撃に関する評価は公開されているデータセットで十分行うことができた。またそれに加え、当初の計画にはなかった仮名化による安全なデータ公開という重要な問題に対しても一定の解決策を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は仮名化の手法の有用性を実データに基づき評価する予定である。また初年度から行っているマルコフモデルによる推論モデルをさらに発展させ、隠れマルコフモデルに基づくより一般的な推論攻撃への対策の考案及びその実証的評価を行う予定である。実データについては昨年度まで利用していたマイクロソフトのデータセットに加え、特定のアプリケーションを想定して収集したデータセットを用いる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、推論攻撃のアルゴリズムの外注に約80万円、また国際会議での発表を2回予定しており、その旅費、参加費として80万円を予定している。
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