2012 Fiscal Year Research-status Report
ランドマークの認知的有用性に基づき歩行者の不安を軽減する経路案内法の実証的研究
Project/Area Number |
23500109
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古川 宏 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90311597)
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Keywords | 歩行者ナビ / 高度道路交通システム / 移動体通信 / 認知科学 / 不安 / 避難誘導 / GIS |
Research Abstract |
本研究の目的は、利用者の迷いや不安を軽減する“安心歩行者ナビ”の実現に向け、ランドマークの利用しやすさを定量的に評価するモデルによる経路探索手法の有効性検証と確立、実用化に向けた仕様策定である。本年度は、提案手法による経路案内機構を組み込んだ歩行者ナビ模擬システムの実装(B)と、これを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整(C)を実施した。 B) 実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築:携帯端末を利用した模擬システム環境として、前年度には歩行者ナビ用サーバとユーザが使用する携帯端末の構築をほぼ完了しており、本年度は、この完成とGISシステムに基づくノードの認知的負荷評価処理システムの構築を終えた。これにより、評価機構の精度を実用化レベルまで向上させるためのパラメータ調整、および最終的な実証的評価を実施するための実験環境が整備されたこととなる。 C) 歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整:前年度から引き続き、B)により構築した環境を用いることで、実際に利用者が歩行者ナビサービスを体験する被験者実験を行い、構築した推定モデルによる結果の妥当性評価と改善を実施した。実験では、被験者による主観的評価データや経過時間等の客観的データを取得した。これらデータに基づき、“位置特定のしやすさ”を推定するモデルの問題点の確認と改良、推定値をコストに加味する方法の検討(コスト関数の提案)を行った。これにより、本手法の目的とする“不安の少ない経路の探索法の確立”に対し、その基本手法を構築できたと考える。同時に、“位置特定のしやすさ”や“不安”におけるユーザの個人差の影響も確認できたことから、この解決が次年度の目標の1つとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「B) 実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築」および「C) 歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整」の2項目を実施する予定としていた。 B)は予定通り、システムの3部“歩行者ナビ用サーバ”、“ユーザが使用する携帯端末”、“GISシステムに基づくノードの認知的負荷評価処理システム”の構築を完了し、実際に利用者が歩行者ナビサービスを体験する環境を利用可能としている。 C)においても、当初の目標である“実環境における歩行者ナビサービスの利用による被験者実験の実施”と“取得データに基づいた不安の少ない経路の探索に適切な方法・パラメータの検討”を完了している。さらに、詳細な検討を通して有用性向上のための課題発見も行っており、来年度の内容をも一部進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
D)歩行者ナビ模擬システムを用いた実証的実験による評価機構の妥当性・有効性の評価:目的は、提案法を導入した歩行者ナビサービスを多様な被験者に利用してもらい、有効性の実証評価を実施することである。経路到達タスクのパフォーマンスに関する定量的評価とユーザによるタスクの容易性や不安に関する自主的評価の結果をデータとして取得する。これより“評価機構にて考慮した各条件変数”と“ユーザの不安”間の因果関係を定量的に解析し、評価機構の妥当性・有効性を評価する。被験者として、青年層に加え高齢者被験者を採用することで、多様な利用者を対象にした評価とする。また、短距離・長距離、都市部・非都市部、住宅地・商店街などの地理的に多様な範囲を条件に組み込む。 E)実用化システムに必要となる基本仕様の策定:目的は、提案手法の実用において、システムに備えるべき機能及び仕様を明確にすることである。利用者の不安や迷いを軽減するナビ支援サービスを実現に向けて、実証実験に用いる歩行者ナビシステムの構築過程で生じた技術的課題、被験者による利用についての観測結果、および被験者による主観的評価結果から、さらに現在の最新機材の能力・制約を考慮することで、実用システムに要求される技術的要件や解決すべき技術課題の確認し、基本となる仕様の策定を行う。 “安心歩行者ナビ”の実現に向けた知見として、ランドマークの利用しやすさを定量的に評価可能とする提案モデルと、これを利用した経路探索手法の有効性・有用性、実用システムが備えるべき要件などについて得られた結果を取りまとめ、国内外の会議・シンポジウムやジャーナルにて成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 地図データベース使用量:昨年度までと同様に、ノードの認知的負荷評価処理システムおよび歩行者ナビ用サーバの利用において、ゼンリン社製の“NAVI開発キットCGI”を地図情報取得のためのサーバインタフェースとして使用する。このために、データベース使用料である“運用費”が必要となる。 (2) 被験者謝金:提案する手法の実証的評価と改良を目的として、構築した歩行者ナビ模擬システムによる被験者実験を実施することを計画している。このとき、実用化に向け多様なユーザ(青年・高齢者など)を想定することが必要なため、多数の被験者に対する謝金の支払いを想定している (3) 成果公表の費用:成果の国内外に向けた公表のために、国内・国外の学会・シンポジウム等における成果発表の旅費および参加費、さらに学術雑誌への投稿料の支払いを計画している。既に“ヒューマン・コンピュータ・インタラクションに関する国際会議”(7月, 米国)に論文が採択されている。また、国内学会の論文誌へ論文を投稿する計画である。 なお、計画に沿って平成24年度末に執行したライセンス費、携帯電話使用料については、平成25年度に会計処理されるため繰越となった。
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