2012 Fiscal Year Research-status Report
人間の色知覚特性の厳密な数理モデリングに基づく色弱補正と色彩情報処理への応用
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23500156
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
趙 晋輝 中央大学, 理工学部, 教授 (60227345)
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Keywords | 色弱補正 / 感性情報処理 / ユニバーサルデザイン / 色彩情報処理 / ヒューマンマシンインターフェース |
Research Abstract |
24年度は、前年度に続き、Brettelの色盲モデルに基づき、LMS空間において混同色線上に計量保存する色弱写像を構成する補正法の改善と性能評価を行った。特に補正結果に関しては、視覚心理学の研究グループと色覚障害者団体の協力を得て、主観評価を行った。 さらに、上記手法の高次元の場合への一般化として、色度平面のような2D、或いは色空間全体のような3Dの場合については、局所アフィン写像を用いる方法とリーマン正規座標系を用いる色変換と色弱補正の方法を提案し、実装した。 まず、2D色度平面において、色空間における標本点の近傍において、色弁別閾値データを照合する局所アフィン写像を求めて、これらの局所アフィン写像の張り合わせとして、空間全体の色差保存写像即ち色弱補正写像と色弱シミュレーション写像を構築する。具体的には、非線形方程式を解くことで、健常者と色弱者の色空間の各対応点対を定めて色差を保存する局所アフィン写像のパラメータを求めた。 次に、リーマン空間としての色空間において、ユークリッド空間における直線に相当する曲線、即ち測地線を計量テンソルによって定義される二次常微分方程式の解曲線として求めた。また、両色空間において、共通の原点(例えばD65など)から出発して、計量によって測る場合の均等分角度をもつ測地線族を計算して、ユークリッド空間における極座標の拡張となる、リーマン正規座標系を構成した。各色空間のリーマン正規座標系とユークリッド空間の極座標と対応付けることで、色空間とユークリッド空間の間の大域等長写像を求めた。色弱者と健常者それぞれの色空間からユークリッド空間への等長写像とその合成写像は、色弱者の色空間から健常者色空間への等長写像となるため、色弱補正写像及び色弱シミュレーション写像が得られた。これらの写像による色弱補正の効果を、SD法によって主観評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究が進み、予想していた研究結果が得られた。 特に、Brettelの色盲モデルに基づく混同色線上における色弱補正法の有効性は、視覚心理学の研究グループとの共同研究として行った心理物理学実験によって確認され、評価成果は国際会議CSAJ2012にて発表している。 Yi-Chun Chen, Yunge Guan, Tomoharu Ishikawa, Hiroaki Eto, Takehiro Nakatsue, Jinhui Chao, Miyoshi Ayama, "Preference of Images with Color Enhancement Assessed by Color Anomalous and Normal Observers" Proceedings of CSAJ2012, International Conference of Color Science Association of Japan 2012, 2012. また、2D色度平面及び3D色度空間における、リーマン正規座標系を用いて、色差保存写像による色弱補正法については、以下の国際会議にて発表した。 Satoshi Oshima, Rika Mochizuki, Reiner Lenz and Jinhui Chao "Color-Weakness Compensation using Riemann Normal Coordinates" Proceedings of ISM2012, 2012 IEEE International Symposium on Multimedia, Dec.10-12, Irvine, 2012 本研究の成果は、平成24年度電子情報通信学会論文賞、喜安善市賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、今までの成果を深化、改善そして発展するとともに、特に工学的に実装しやすい局所アフィン写像を用いる補正方法の実現と拡張を重点的に進めたいと考えている。具体的に、今まで色度平面上に用いた色弁別閾値データに基づく非線形方程式を3D色空間へ拡張し、さらに局所アフィン写像における、各局所近傍における原点の移動という現象に対する対策を含めて検討したい。 具体的には、健常者と色弱者の色空間の各対応点対の近傍間の色差を保存する色弱写像を構成するために、局所計量保存の条件式からは、局所アフィン写像の線形写像部分をユークリッド変換として推定し、そのパラメータを二次多変数方程式を解くことによって求めたい。さらに逐次的に近傍同士の共通部分の滑らかな接続を利用することで、各座標の原点の像を求め、局所アフィン写像のアフィン部分を求める予定。このように求められた健常者と色弱者の色空間の間の局所アフィン写像を用いて、色弱写像と補正写像を実装して、主観評価を行う予定。 同時にリーマン正規座標系を用いた方式の理論体系を整理しつづ、高速化と主観評価を続けて行いたい。 そして、客観的な色弱度と別に、色弱者の経験感性を反映できる主観的記憶色の特性を利用した「主観的色弱度」による推定方式を考案し、補正アルゴリズムを時限する予定。さらに、実装と評価も検討したい。 また、色弱者の個人情報とプライバシー保護の検討を引き続き行う予定。特に色弁別閾値情報が生体認証に利用される可能性が判明したため、それに対応可能な色弱者の個人情報とプライバシー保護する方式を確立したい。現有の暗号方式にとって代わる、データの安全性が高く効率的な暗号化方式と計算方式を引き続き検討する。将来的には、色弱情報の取得と補正画像の評価をクラウンドコンピューティング環境における行う安全な方式についても検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度予算は、色覚情報を測定するための物品購入や、計算ソフトウェアの更新など、そして情報収集と研究交流及び研究成果の発表のための学会出張に使用する予定。
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