2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500162
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
西村 竜一 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所多感覚・評価研究室, 専攻研究員 (30323116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薗田 光太郎 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90415852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 情報ハイディング / 音響メディア / 機能拡張 / Ambisonics / 個人適応 / ヘッドホン再生 / 立体音響 / 臨場感 |
Research Abstract |
音楽コンテンツの配信において,一般に配信元では多くの信号が利用可能であるのに対し,実際に配信される信号は,少数スピーカ再生用にダウンミキシングされたものがほとんどである.しかし,この信号をスピーカ以外のヘッドホンやイヤホンで再生しても,必ずしも最適な音環境は実現されない.ヘッドホン聴取用の信号は,情報量豊かな配信元の信号から合成したほうが,より臨場感溢れる音になると期待される.そこで,配信元でヘッドホン用の信号を合成し,この信号をスピーカ用の信号から生成するためのフィルタを透かしとしてスピーカ再生用の信号に埋め込むことで,スピーカとヘッドホンの両方で最適化された信号を,ひとつのメディアとして提供することが可能になると考えられる.本研究課題は,このようなメディアの機能拡張を実現することを目的としており,配信元の信号形態のひとつとして,高次 Ambisonics 信号を想定し,今年度は高次の Ambisonics 信号を生成可能な球状マイクロホンアレイを構築した.一方,情報量が豊かという点では低次の Ambisonics 信号を複数使用しても同様の効果が期待できることから,聴取者の両耳の位置に低次の Ambisonics マイクをそれぞれ配置した条件で,ヘッドホン用に臨場感のある音を再現する手法について検討した.考案した手法に対し,音像定位の手掛かりとして重要な両耳間強度差や位相差がどの程度再現できているかを計算機シミュレーションにより評価するとともに,音の広がり感に相関が高いと言われている両耳間相互相関度について調査した.検討結果は,日本音響学会の研究発表会において報告を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,高次 Ambisonics 信号を生成可能な球状マイクロホンアレイの構築を実施計画として掲げていた.当初は,球状マイクロホンアレイ一式を全て新たに揃えて構成することを予定していたが,システム構成を精査した結果,想定していた予算内で実現することが難しいことが判明したため,既に所有しているマイクロホン等も使用して再設計し,製作することとした.さらに,研究予算を効率的に活用するため,マイクロホンの配置位置や本数を自由に変更可能な設計とすることで,システム構成に柔軟性を持たせる工夫をした.これらの条件を満たしつつ,十分なチャネル数を有する球状マイクロホンアレイを構築するのにやや時間を費やしたが,年度内に必要なチャネル数で収音が可能なシステムを構成することができた.その点では,概ね順調に進展していると考えられる.ただし,構築したマイクロホンを用いた高次 Ambisonics 信号の取得までは確認ができておらず,実際に測定を行った上で,正しく高次 Ambisonics 信号に変換できなかった場合には,システムの修正等を今後行う必要性が生じる可能性も現段階では残っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者である薗田光太郎が,ポーランドの Adam Mickiewicz University に1年間海外赴任することになり,渡航中は,設備や研究環境,および渡航先所属機関における本人の身分等の都合により,本研究課題の研究分担内容を実施することが困難となる.しかし,渡航期間は1年間であり,帰国後直ちに当初予定していた分担内容を実施する予定である.当該研究分担者の役割分担は,研究代表者が担当する本研究課題において調査・解明した結果に基づいて行われる内容が主であるため,補助事業期間の後半においてその役割が大きくなる内容である.そのため,4年の研究期間のうちの2年目にあたる平成24年度に研究が行えなかったとしても,十分に挽回可能な範囲であると考えられる.したがって,本補助事業期間全体を通して見たときに,研究計画の遂行および目的達成には支障がないと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の主な研究課題は,構築した球状マイクロホンアレイで高次の Ambisonics 信号を所得し,そこから合成したヘッドホン用信号と,低次の Ambisonics 信号との関係性を解明することにある.この課題を遂行するには,高次の Ambisonics 信号の取得が正確に出来るとともに,そのデータを円滑に信号処理できる環境が必要である.そこで,前年度に構築した球状マイクロホンアレイでの収音系を調査し,問題がある場合には,その改良や改善を行うのに研究費を充当する.また,初年度に考案した低次の Ambisonics を複数用いる手法では,低次の Ambisonics 信号を同時に複数取得可能な環境が必要となるため,その環境を構築する費用にも充てる.ただし,球状マイクロホンアレイの実現のほうが優先度が高いため,そこで必要となる費用を十分考慮した上で判断する.また,昨年度は主に計算機シミュレーションによる検討までしか行えなかったため,必要に応じて聴取実験により臨場感の再現精度の評価も行い,その場合には,実験聴取者の謝金にも研究費を使用する.さらに,年度中の研究成果についても,進捗に応じて,随時,学会や研究会で発表を行う予定であり,その参加費や旅費にも使用する.
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Research Products
(3 results)