2012 Fiscal Year Research-status Report
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23500162
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
西村 竜一 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所 多感覚・評価研究室, 研究マネージャー (30323116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薗田 光太郎 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90415852)
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Keywords | 情報ハイディング / 音響メディア / 機能拡張 / Ambisonics / 個人適応 / ヘッドホン再生 / 立体音響 / 臨場感 |
Research Abstract |
音楽コンテンツの配信において,一般に配信元では多くの信号が利用可能であるのに対し,実際に配信される信号は,少数スピーカ再生用にダウンミキシングされたものがほとんどである.しかし,この信号をスピーカ以外のヘッドホンやイヤホンで再生しても,必ずしも最適な音環境は実現されない.ヘッドホン聴取用の信号は,情報量豊かな配信元の信号から合成したほうが,より臨場感溢れる音になると期待される.そこで,配信元でヘッドホン用の信号を合成し,この信号をスピーカ用の信号から生成するためのフィルタを透かしとしてスピーカ再生用の信号に埋め込むことで,スピーカとヘッドホンの両方で最適化された信号を,ひとつのメディアとして提供することが可能になると考えられる.初年度は,高次と低次の Ambisonics における空間情報量の差に着目し,本研究課題で提唱している考え方を実現するアルゴリズムの定式化を行った.また,そのアルゴリズムを実装し,音像定位の手掛かりとして重要な両耳間強度差や位相差がどの程度再現できているのかを計算機シミュレーションにより評価するとともに,音の広がり感に相関が高いと言われている両耳間相互相関度について調査した.当該年度は,これまでの検討で欠けていた,ヘッドホン再生用に調整された信号のスピーカ再生時の性能評価,並びに,ヘッドホン再生時の主観評価実験を実施した.スピーカ再生時の性能は,スピーカ再生時の空間の音圧分布の変化を計算機シミュレーションで再現し,透かし埋め込みをしたものとそうでないものとで比較した.一方,主観評価実験では,水平面上30度間隔のいずれかの方向から到来するバースト雑音をヘッドホンで提示し,その音像の方向を判断させた.これらの結果から,スピーカ再生時の音圧分布がやや劣化するものの,ヘッドホン再生時の定位性能は確かに向上することが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究分担者である薗田光太郎が,当該年度はポーランドの Adam Mickiewicz University に海外赴任しており,設備や研究環境,および渡航先所属機関における本人の身分等の都合により,本研究課題の研究分担内容の実施を一時中断することとした.その分,当初の研究計画に比べると,やや遅れが見られる.
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Strategy for Future Research Activity |
海外赴任していた研究分担者が帰国するため,この間中断していた部分の研究内容を再開し,遅れを取り戻す予定である.当該研究分担者の役割分担は.研究代表者が担当する本研究課題において調査・解明した結果に基づいて行われる内容が多いため.補助事業期間の後半においてその役割が大きくなる内容である.そのため,これからでも十分に挽回可能な範囲であると考えられる.実際,次年度の主な研究内容は,これまでに提案した手法の性能を適切に評価し,その評価結果に基づいて改良を加え,より良いものにすることである.当該年度にも,ある程度の性能評価を行ったが,計算機シミュレーションが主であり,そこでの差がどの程度実際の聴取に影響を及ぼすかについては,まだ十分に検討が行われているとは言い難い.そこで,主観的な影響も考慮した性能評価を行う予定である.さらに,その評価結果をフィードバックし,手法の改良も試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者が当該年度は海外赴任中で,本課題に関する研究が行えないため,採択時の予定額より減額して支給を受けることも考えられた.しかし,研究代表者のほうで余裕があれば,少しでも研究を先に進められるように,当初の予定額通りの支給申請を行った.実際のところは,その余裕はなく,その結果,繰り越しの助成金が発生することとなった. 一方,次年度の研究内容のうち,評価実験の実施が少なくない割合を占めている.そこで,正しい実験を行うのに必要な環境を整える必要があり,そのために必要なものを購入するのに研究費を使用する.聴取実験をナイーブな聴取者を対象として実施する場合には,外部の参加者に対して謝金を支払う必要があるため,その費用にもあてる.また,研究期間の後半に向けて,研究分担者との連携を密にして進める必要があり,研究打ち合わせのための旅費等に使用する.さらに,音響学に関する国際会議である International Congress on Acoustics (ICA2013) に,本研究課題で提案している手法をまとめた原稿を投稿したところ,採択されたので,その発表のための海外出張旅費に使用する.その他にも,関連研究情報の収集や意見交換のための,国内研究会参加に必要となる旅費に使用する予定である.
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