2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500162
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
西村 竜一 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所 音声コミュニケーション研究室, 研究マネージャー (30323116)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薗田 光太郎 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90415852)
|
Keywords | 情報ハイディング / 音響メディア / 機能拡張 / 5.1サラウンド / 個人適応 / ヘッドホン再生 / 立体音響 / 制約条件・重み付き最小二乗法 |
Research Abstract |
前年度において,高次の Ambisonics 信号からヘッドホン再生用の立体音を生成し,これをよりチャネル数の少ない低次の Ambisonics 信号からでも合成できるようにする手法を考案した.コンテンツを制作する収音サイドでは,多チャネルで空間情報が豊かな信号が利用可能であっても,コンテンツの消費者であるユーザーの手元へは,パッケージングや通信規格の制約により,少ないチャネル数でしか伝送できないため,近年スピーカー再生よりも利用場面が増えているヘッドホンやイヤホン再生の時だけでも,豊かな臨場感でコンテンツを体験できるように,音響メディアの機能拡張をするという本研究のコンセプトを具現化したものであった.しかし,Ambisonics による収音は,現在必ずしも普及しておらず,特に高次の Ambisonics の収音システムにいたっては,一般的に市販されていないのが現状である.この点を考慮し,当該年度は,同様のコンセプトをより一般に普及している5.1chサラウンド信号に対して適用する試みを行った.5.1chサラウンド信号をヘッドホンやイヤホンで聴取する場合,各チャネルに係数を掛けて足し合わせる通常の単純なダウンミックスでは,立体的な音にはならず,多くの場合,頭内に音像が定位されてしまう.しかし,頭部伝達関数を用いて適切な信号処理を行えば,立体音として知覚させることが可能である.この処理には畳み込み演算が用いられ,処理能力や処理時間が必要となることから,事前に立体音を生成した上で,この信号が通常の単純なダウンミックスで合成されるように,5.1chサラウンド信号を再合成する手法を検討した.スピーカで再生した際には,通常の5.1chサラウンド信号としても利用できる必要があるため,制約条件・重み付き最小二乗法を用いてこれらの要件を満たす合成手法を実現した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の基本コンセプトを実現する手法は,これまでの検討により,概ね実現することができた.当初の予定では,定式化をして基本的なシステムを実現した後,その性能評価と改良を繰り返すことで性能向上を図ることを予定していた.しかし,社会における実際の普及状況を鑑み,Ambisonics に加えて5.1chサラウンドの音響フォーマットを対象として研究開発を行ったため,現時点では両方の手法の性能評価を十分に実施したとは必ずしも言えない状況にある.
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で十分実施したとは必ずしも言えない性能評価,特に聴取実験について実施し,必要に応じて提案手法の性能改善を試みる.また,本研究課題の最終年度であることから,これまでの研究成果を研究会や国際会議等で発表し,本研究課題により実施した研究成果を広く公表するとともに,さらに研究内容を発展させて行くための連携研究の可能性を模索して行く.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
提案手法の評価実験において,主観評価実験を実施する場合には,被験者謝金を支払う必要がある.この費用を見込んで当初の予算計画を行っていた.しかし,当該年度は,これまでとは異なる音響フォーマットの信号に対する手法の開発を進めたため,十分に評価実験を実施することができなかった.その分が次年度使用額として発生した. 次年度は,これまで実施が不十分であった分も含めて評価実験を実施することから,その際の被験者謝金に当てるとともに,複数の手法を提案したことから,それらの外部発表に係る旅費等に充当する予定である.
|