2012 Fiscal Year Research-status Report
楽譜情報に基づく記号論的音楽情報検索のための基盤技術開発
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23500165
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大久保 好章 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (40271639)
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Keywords | 音楽情報検索 / アルゴリズム / クラスタ抽出 |
Research Abstract |
今年度の主な成果は次の通りである. 楽曲データベースの整備:1,000,000 の楽曲から成る Million Song Dataset のデータ整形・加工処理を行い,本研究で開発したシステムで利用できる形式に整備した.具体的には,オリジナルデータとして公開されているクロマベクトル(実数ベクトル)列から,強成分のみを抽出したバイナリベクトル列へ変換することで離散化を行った.これをコード進行の代替物と捉えることで,楽曲の(ある種の)構造が明らかとなる.音楽に特化した SNS により提供された楽曲タグ情報も一部取り込んだことから,複合的視点からの楽曲間類似性も扱える様になった. 楽曲タグ情報に基づくクラスタ抽出の予備実験:Million Song Dataset の一部(10,000 曲)にデータに対して付与された楽曲タグ情報のみを用いたクラスタ抽出実験を予備的に行った結果,タグ情報は高品質クラスタの抽出において極めて有効な制約として機能することが観察され,今後の研究における有用な知見を得ることができた.クラスタ探索過程にこうした制約を組み込むことで,計算処理の高速化も実現できるものと考えている. クラスタ構造の変化検出手法の開発:様々な視点からのクラスタ構造の変化を検出するための基盤アルゴリズムの設計を行った.対象間の関係がグラフ構造で表現された場合,そこでのクラスタとは,密な部分グラフを構成する頂点集合を意味する.ここでは,所与のふたつのグラフにおける構造変化検出を,一方では擬似的な独立集合,他方では擬似的なクリークを形成する頂点集合の抽出処理と捉え,制約付き極大 k-plex 探索問題としてこれを定式化し,その高速アルゴリズムを与えた.これにより,例えば,ジャンル A の楽曲ではよく用いられるが,その他のジャンルではほとんど用いられないコード進行パターンの抽出が可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
楽曲データベースの整備がほぼ整い,最終年度における本格実験の目処が立った.また,高品質のクラスタ抽出におけるタグ情報の有用性が確認できたことから,タグ情報を制約としてクラスタ抽出過程に取り込むことで,これまでに提案したアルゴリズムを,品質および効率の面で更に改良できる可能性があることがわかった.さらに,新たな基盤アルゴリズムの設計・実装も行い,その大まかな挙動を把握することで,多視点情報検索においても有用であろうとの見通しも得られた.これらにより,次年度の具体的課題も明らかととなり,当該研究研究は大きく停滞することなく着々と進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の最重点課題は,大規模音楽データにおける,これまでに提案したアルゴリズムの有用性評価である.一部のデータを用いた予備実験では部分的に行っているが,データが大規模になった場合の品質・計算効率を評価する必要がある.品質については,被験者による経験的な評価が主になるだろう.また,計算効率については特にユーザとのインタラクティブなやり取りに耐えうるかを重点的に観察・評価したいと考えている.それらの結果を踏まえ,必要に応じて問題設定やアルゴリズムの改良・修正を試み,提案アルゴリズムの利点・欠点を整理し研究をまとめる.当該研究の総括を通して,以降の研究展開につながる有用な知見が得られることを期待する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度は,より規模の大きなデータに対して実験を行うため,主記憶を拡充した50万円程度の計算サーバの導入を検討する.これは,Million Song Dataset を基礎とするデータベースを管理するためのデータサーバも兼用するものとする.これ以外の研究費は,主に研究成果発表のための国内・外国旅費として使用したい.また,今年度未使用額(約90千円)については,増設ハードディスクやデータ記録メディア等の消耗品の購入に使用する予定である.
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Research Products
(7 results)