2011 Fiscal Year Research-status Report
不完全情報下での隠れた社会ネットワーク推定と普及プロセスの研究
Project/Area Number |
23500168
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40431663)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 社会ネットワーク / 社会シミュレーション / パターン指向 / 普及プロセス |
Research Abstract |
1)顧客情報など実データからの複数パターン抽出法の研究複数パターンを抽出する手法として、複数の異なる性質を持つ社会ネットワークを合成し、それによって生じる情報伝播の変化を捉えるためのシミュレーションモデルを構築した。このモデルでは、Watts-Strogatzのスモールワールドモデル(WSモデル)と、Barabasi-Albertのスケールフリーモデル(BAモデル)でそれぞれ生成したネットワークを合成することで、目的となるネットワークを作成した。具体的には、次数4のレギュラーネットワークとBAモデルによるスケールフリーネットワークをそれぞれ生成し、それぞれのネットワークの対応するリンクの論理和を取り2つのネットワークを重ねあわせてネットワークを作成した。このようにして作成したネットワークにおける情報伝播の過程を、マルチエージェントシミュレーション手法を用いて観察し、複数パターンがもたらす影響を分析した。この成果は、ESSA2011やCSSS2011などの社会シミュレーション関係の国際会議で報告を行なった。2)不完全情報からの社会ネットワーク推定手法の研究観察された複数パターンを用いて、合成されている本来の現象のネットワーク構造を推定する研究を実施した。これは、パターン指向モデリングと呼ばれるGrimm等の手法を、社会ネットワーク推定に拡張したものである。推定対象として、家族ネットワークのデータを用い、分析を実施した。初期実験として、単一のパターンを用いる場合と複数のパターンを用いる場合の比較を行い、後者が実データとのマッチングにおいてより優れた結果となることを明らかとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度研究では、1)顧客情報など実データからの複数パターン抽出法の研究を行うことを計画していた。これに関しては、消費者ネットワークとして、複数の異なる性質を持つ社会ネットワークを合成し、それによって生じる情報伝播の変化を捉えるためのシミュレーションモデルを構築した。これを実験ベンチとして、どのような普及プロセスが発現するかを詳細に分析した。また、意思決定の基礎モデルとして、2種類の閾値モデルを適用し、異質なパターンのモデル化を行った。結果として、ネットワーク構成の違い、および意思決定方法の違いに着目することで、複数の異質なパターンの抽出が可能であることが明らかとなった。また、2)として、不完全情報からの社会ネットワーク推定手法の研究を計画していた。そこで、パターン指向モデリングと呼ばれるGrimm等の手法を、社会ネットワーク推定に拡張し、推定対象として、家族ネットワークのデータを用い、分析を実施した。結果として、異質なパターンが複数あることの方が、同質なパターンが複数あるよりも、精度の高いネットワーク推定が行えることが示された。これらを理由として、概ね初年度の計画は順調に進展しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
23年度研究費はほぼ計画どおり使用したが、若干、次年度使用額が生じた。その分を併せて、24年度の研究では、規範行動および情報価値行動の両者を考慮した認知モデルの設計および、進化計算を用いた複数パターンによる逆シミュレーション法の研究を行う予定である。購買などの消費者行動として、家族や友人・同僚などからの影響を考慮する規範行動と、商品のデザインや仕様といった機能的情報から意思決定する情報価値行動の両者がある。本フェーズでは、ネットワークの視点からこれらの両者を統合したモデルを構築する。モデルとしては、マルチエージェントモデルを用い、自律的なエージェントの意思決定過程をモデル化し、実装することを計画している。また、関連する事例として、ショップボットと呼ばれるサイバー空間上の店舗価格検索システムが、消費者行動にどのような影響を与えるかについての研究も、進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に実施した研究成果を、本年度の国際会議で発表するための校閲費、旅費として主に使用する予定である。加えて、シミュレーションツールのローカライゼーションのための機器購入を予定している。
|
Research Products
(7 results)