2011 Fiscal Year Research-status Report
脳fMRI研究・機械学習・複雑ネットワークを融合した計算神経グラフ言語学の試み
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23500171
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤間 啓之 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60242301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徃住 彰文 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50125332)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | fMRI / 機械学習 / 脳科学 / マルチリンガル |
Research Abstract |
脳の賦活データを基にした機械学習のため、名詞の示す対象の属性喚起・連想タスクを実験参加者に課してfMRI(機能的磁気共鳴画像法)の実験を10回以上にわたって進めた。同時に、そうした言語刺激の違いが脳にもたらす神経発火パターンの自動分類として、マルチヴォクセルパターン分析Multi voxel pattern analysis(以下mvpaと略する)を行い、ペナルティ付ロジスティック回帰の手法を用いて、実験参加者の思考内容を予測推定する機械学習モデルの構築を行った。特に、海外共同研究機関であるイタリア・トレント大学や米国カーネギーメロン大学とともに、計算神経言語学という新しい研究分野において、日本語、韓国語、中国語など、独自の文字体系をもつ東アジアの諸言語を刺激素材にしたマルチリンガルなアプローチを進め、韓国語、中国語のバイリンガル脳のmvpaについては、2012年 Cognitive Science2012(CogSci2012)のメンバーズポスターセッションにMulti-Voxel Pattern Analysis Applied to the Language Switch in the Bilingual Brain--A fMRI Studyが受理され、日本語の刺激素材をもとにしたデータの解析に関しては、研究論文Predicting Neural Activation Patterns across fMRI Sessions with Different Stimulus Modalities: A practical MVPA StudyがFrontiers in NeuroScience誌で現在査読中である。これらにおいては、刺激呈示条件を変更しても、異なるセッション間で、認知状態を予測する有意な機械学習モデルが立てられることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の所属する東京工業大学のfMRI(機能的磁気共鳴画像法)の管理グループメンバーとして、機材の管理・メンテナンス、および本研究課題を含む他のfMRI実験のオペレーションをすべて研究代表者が行い、機材の理解と実験経験を飛躍的に豊富なものにし、それを本研究課題遂行に当たって、データ取得上の質の良化に反映できた点は「期待以上」と評価できる。また、mvpaの分析のため、Pythonを用いたPyMVPAソフトウェアのプログラミングを集中して行ったが、その面でも、ヴォクセルの特徴抽出、特に発火パターンの時系列解析で幾つかの独自スクリプトを作ることができ、及び、それと従来研究代表者がパッケージ化してきたMathematica, Matlabプログラムとの間で連携もうまくいきつつある。一方、脳神経ネットワークも一種の複雑ネットワークであるとの観点から企画された連想辞書データに関しては、fMRI実験刺激に関連する連想情報を日本語、中国語に関して拡大することができたが、そうしたデータのグラフ解析、およびそれと脳グラフ解析(fcMRI)との連携はまだ端緒についたばかりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の申請内容にあった独自の計算神経言語学の研究を本格化させてゆく。特に複数ヴォクセルパターン推定に必要なコアの意味様相として、有名なMitchell et alのScience論文(2008)にあるような恣意的に選択された基本動詞でなく、fMRI実験におけるタスクに近い概念連想を集大成した大規模言語データに基づき、グラフクラスタリングの結果としての概念クラスターのハブから自動抽出する。またこれまでは、Murphy et al, Mitchell et al,のように、Webコーパス等、言語コーパスから共起関係を抽出することで、推定用の回帰式の重みを計算することが行われてきたが、申請者は、連想概念辞書から作られた意味ネットワーク上で、次数(相関)、クラスター係数、最短パスなどグラフ指標を用いた類似度(距離)の値を用いてこれを計算する。さらにmvpaに必要な特徴抽出、特に有効なヴォクセル抽出のため、これまで試みられたことのない、ヴォクセル間複雑ネットワークの計算を用いる。これまでしばしな、ヴォクセルはそれぞれ独立したアトムとして計算され、空間的相関を見る場合、サーチライトのような近傍抽出か、スムージングのような連続処理が行われるにとどまってきた。申請者は、Sporns(2004)らの提案するfMRIデータの複雑ネットワーク化を推進し、訓練事例から取得したヴォクセル同時賦活データをもとに、Stam and Reijneveld(2007)の相関フィルタリングなどを参考にしながら、新しく効果的な特徴抽出の技法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は実験参加やデータ解析補助への謝金執行が予定を下回ったが、これは、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)機材の管理に多くの時間がかかったためである。次年度は、実験も順調に進むことが期待され、これら謝金執行も滞りなく行われる予定である。また、研究初年度ということもあり、投稿論文を発表する場としての国際会議への出席がなかったこともあり、旅費の執行が0であった。次年度は、既にCognitive Science2012(CogSci2012)の出席が決まっており、また、外国の共同研究者との打ち合わせ等も含め、十分な旅費執行が予定されている。
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