2012 Fiscal Year Research-status Report
脳fMRI研究・機械学習・複雑ネットワークを融合した計算神経グラフ言語学の試み
Project/Area Number |
23500171
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤間 啓之 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60242301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徃住 彰文 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50125332)
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Keywords | 国際情報交換(アメリカ、イタリア) / fMRI / 脳 / 機械学習 / 複雑ネットワーク |
Research Abstract |
本研究においては、計算神経言語学の分野における国際共同研究(カーネギーメロン大学・トレント大学)が進行し、その成果は、申請者を第一著者として、Frontiers in Neuroinformatics誌にDecoding semantics across fMRI sessions with different stimulus modalities: a practical MVPA study として発表され、Science News の一面にも掲載された。この実験では、言語刺激として、日本語の名詞40 個(哺乳類20 種、道具類20 種)を表す「写真」と「名前読み上げ音声」を同期させたものを利用し、典型的な属性・印象を想起させて得られた脳画像データを機械学習にかけ、実験参加者が考えている内容を予測するという解読モデルを構築して、80~90%の分類精度を得ることに成功した。この手法は複数voxelパターン分析Multi voxel pattern analysis(以下MVPA と略する)と呼ばれるもので、実験参加者の認知的状態を脳の賦活パターンから推定する、いわば心を読むことを目的としている。この論文では、実験参加者ごとの脳反応の違いを時間的、空間的にどのように分析するか、個人差を考慮しながらMVPAの最適条件を探索的に求める体系的な方法が提示された。またMVPAで分析した場合、言葉の意味処理に関して、特定の概念に関連して強く賦活するvoxelは、特定の解剖学的部位に集中せず、脳全体にわたってやや異なる形で分散し、これが個人間のモデリングを難しくしていることが判明した。さらにこの実験の中からバイリンガル研究の側面に絞り、言語を切り替えてもものモデルが成立することを示すため、認知科学の国際会議大会CogSci2012でポスター発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、既に14人の実験参加者(7人の中国人留学生で日本語学習者と7人の韓国語・中国語バイリンガル)が2回に亘りfMRI実験に参加し、第一論文のタスクの大枠を踏襲しながら、言語刺激と概念想起の言語が異なると言う条件で脳反応データを取得した。現在、このデータをもとに第二の国際学術雑誌論文投稿を準備中で、分析の最終フェーズに入り、論文はほぼ完成し、投稿直前の段階である。 これは、MVPAにおいて、ある人の脳から計算された反応予測モデルを他の人の脳に適用しても精度が落ちない、素性選択のアルゴリズムを新たに提案するものである。この実験参加者間モデリングでは70%に近い予測精度を得た。さらにそれに加え、一方で、本実験課題の要である、「言語コーパスの情報からfMRI反応データを予測する」計算神経言語学の論文も、第三論文として執筆を開始している。ここでは、まず、Edinburgh Association Thesaurusなど連想辞書データを複雑ネットワーク(グラフ)という形で捉え、その中の点ノードに置かれた単語間の距離を独自のアルゴリズムMiFで計算した。さらにカーネギーメロン大学との共同研究として、Mitchell et al のScience論文で知られるfMRI反応予測アルゴリズムにこの成果を適用し、意味素性の重み行列として、基本動詞の共起確率行列の代わりにMiF行列を利用し、75%を超える精度を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度なので、研究のまとめのフェーズに重きが置かれる。具体的には、この3年間の成果を最終的には3本の国際学術雑誌(1本は掲載済み)に投稿し、遅くとも最後の1本については採録の通知をいただくことを目標としている。現在、Cross-subject Modeling Based on Joint Ranking Feature Selection for Conceptual Decoding--An fMRI Studyという題名でFrontiers in Neuroinformatics誌に投稿を準備中である。今年度は、レヴューワーの要求に合わせ、これまで得られたデータの再分析を別のアルゴリズムやもう少し網羅的なパラメーター設置を通じて行なうことが考えられる。前年度で様々に構造面・機能面で個人差がある脳の間でも、モデル精度の落ちない機械学習、特に素性選択のアルゴリズムを提案できたので、それをさらに拡張した方法論を考えてゆきたい。 同時に2013年10月から、残りのfMRI実験を行い、数名の韓国語・中国語バイリンガルを実験参加者にして、言語刺激と概念想起の言語が異なるばかりでなく、ランダムに役割言語を切り替えると言う、条件下でのMVPAを行なう予定である。 さらにこれらのfMRIデータを言語コーパス、ここでは連想辞書の意味ネットワークにおける距離情報から予測するモデリングについては、Tom MitchellらCMUのScience誌研究グループがネットで公開したfMRIデータでは80%に近い精度が得られたので、これを我々が今年度に取得したfMRIデータについても試してみることにする。そのために計算神経言語学の汎用性のあるプログラムを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は効率的に研究費の使用が出来たため、fMRI実験を主に翌年に行うこととした。 主にfMRI実験の利用料、fMRI実験参加者謝金(バイリンガルとレベルの高い第二言語学習者から選択する)として計上する。これは25名*4時間を予定し、刺激言語とタスク言語を1回のセッションでランダムに切り替えるという難しいタスクで行なうので、リハーサルのプレタスクに時間とコストをかける。またfMRIの実験に着用する実験着の毎回のクルーニングや、実験の安全・衛生に必要な消耗品も購入する。さらに、Neurobiology in linguisticsなどの国際会議に出席し、発表、研究情報の収集などを行なうための旅費も計上する。また本年度は研究業績を電子ジャーナルに2本掲載する予定なのでその掲載料も含む。
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Research Products
(4 results)