2011 Fiscal Year Research-status Report
ボケと雑音が複合的に重畳した画像の復元アルゴリズムとその実用化に関する研究
Project/Area Number |
23500227
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
辻 裕之 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (70350676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 誠聡 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (40454178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 画像処理 / ディジタル信号処理 / 非線形フィルタ / 混合雑音 / 画像復元アルゴリズム |
Research Abstract |
本研究では複合的な要因で劣化した画像の実用的な復元アルゴリズムを構築することが目的である.初年度はその基本アルゴリズムとして,ガウス性雑音とインパルス雑音が混在した混合雑音による劣化画像に適用可能なTVフィルタに基づく画像復元法を提示し,その要素技術である「最適λマップの推定法」,「インパルス雑音の検出手法」の2つを検討することが主要な作業となった.前者のλマップ推定法における課題は,平滑化の度合いを決めるパラメータλの値を復元後の画質が最も良くなるように画素毎にいかに制御するかという点にある.当該年度においては,従来から提案していた各画素の局所情報に応じて適切なλ値を推定する手法において,事前に学習が必要となるσ-λ曲面の構成法を改善することにより,復元画像の画質を向上できることを確認した.なお,ここで得られた成果については国内のシンポジウムにおいて発表済みである.一方,後者のインパルス雑音検出における課題は,(必ずしも固定値でなく)任意の輝度値をもつインパルス雑音をいかに正確に検知するかという点にある.当該年度においては,画像曲面上で計算した曲率(の絶対値)が周辺近傍領域に比べて著しく高い値を示す点をインパルス雑音として検知するというアイディアを新たに考案し,シミュレーションによる検証を行った.なお,本シミュレーションによる結果については,電子情報通信学会総合大会において発表済みである.さらに,当該年度においては,次年度以降に基本アルゴリズムをハードウェアに展開するための準備として,TVフィルタのような反復処理を伴うフィルタ処理をハードウェアで実装するための基礎検討を並行して進め,今後のハードウェア化の基本方針を明らかにした.なお,本成果については,電子情報通信学会総合大会において発表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては,まず基本アルゴリズムに関連して「最適λマップの推定法」,「インパルス雑音の検出手法」の2項目を主に検討してきたが,前者についてはおおむね計画通りの進行状況である.一方,後者については画像曲面の主曲率に着目した新たなインパルス検知手法の提案を独自に行ったが,今回比較対象としたPixel-Wise MAD(PWMAD)に比べると,固定値インパルスでかつ重畳率が低い場合(~5%)にエッジやテクスチャに起因する誤検知が改善する傾向があるものの,特にランダム値インパルスを想定した場合には十分な性能が得られているとは言い難く,今後はアルゴリズムの変更も視野に入れながら,基本アルゴリズムとの親和性の高い検知手法を検討する必要がある.さらに,当該年度においては,基本アルゴリズムをハードウェア化するための準備として「ハードウェア向けアーキテクチャ」を検討してきたが,本項目についてはおおむね計画通りの進行状況である.当初の計画ではこれに加えて「反復停止条件の検討」を並行して進める予定であったが,上述したインパルス検知手法の検討が難航したため,十分な検討を行うことができなかった.シミュレーションの段階では理想画像が存在するため,復元画像との間でPSNRなどの客観評価値を算出し,これを最大化する様に反復回数を決めることができたが,現実のシステムにおいては理想画像が存在しないため,別の評価基準に基づく反復停止条件の検討が必要となる.本項目についてはいくつかの反復停止条件の候補が提示された段階であるので,今後これを実験により検証して,ハードウェア化に最もふさわしい停止条件を決定する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究項目であったインパルス検知手法,反復停止条件については,次年度においても引き続き検討を行う.基本アルゴリズムとの親和性及び実用性を考慮し,十分な性能が確認できれば,既存アルゴリズムの修正や組み合わせを採用することも視野に入れて考える.研究の進み方がやや遅れ気味であることから,本項目を担当する研究補助者を1名増員して研究体制を強化することとする.一方,基本アルゴリズムに関わる次年度の中心的な検討課題は,従来のTVフィルタのフレームワークに対してボケ修復機能をいかに追加するかを検討することである.これまで検討してきたアルゴリズムは,異なる2種類の雑音(ガウス性雑音とインパルス雑音)が同時に重畳した劣化画像を想定しており,TVフィルタをベースとしてこれらを同時に修復する手法を提示するものであった.これに対して次年度においては,上述した2種類の雑音に加えて,レンズや手ブレに起因するボケが複合的に重畳した劣化画像に対しても適用可能となるように基本アルゴリズムの拡張を行う.次年度におけるもう一つの中心的な検討課題として,当該年度に検討した基本アルゴリズムをいかにハードウェアへ展開するかが挙げられる.TVフィルタのような反復法を用いたアルゴリズムをハードウェアに実装するための基本的なアーキテクチャは当該年度においてすでに検討済みであるので,次年度はさらに具体的な検証を行うため,FPGAボードを用いて基本アルゴリズムの機能実現を行うとともに,作製した実機を用いてアルゴリズムの性能評価を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
画像復元アルゴリズムの基礎的な検討を行う環境として,当該年度よりマスワークス社のMATLABを使用してきたが,今後も引き続きアルゴリズム開発環境を最新の状況に維持するために,MATLABのソフトウェア保守契約の締結に必要な費用を計上する.なお,MATLABは画像処理に非常に適した開発環境であるが,インタープリタ言語であることから処理速度が遅いという難点がある.今回これを解消するために,MATLAB Coderを新たに購入することにより,MATLABコードの中で処理時間のかかる部分の高速化を行い,アルゴリズム開発の効率化を図る.一方,ハードウェア化の検討に関しては,当該年度にFPGAボードをすでに入手済みである.このため,次年度にはこれらのシステムを管理・制御するためのPCワークステーション及びその周辺機器を必要な物品として計上するのみである.また,次年度に必要となる旅費等については,研究代表者(または研究分担者)と研究補助者2名が国内及び海外の研究発表にそれぞれ1回ずつ参加することを想定した金額分を計上する.なお,当該年度の支出額が当初予定していた所要額を\12,027だけ下回っているが,これは学会参加に伴う旅費・宿泊費を節約した結果として得られた剰余金であり,次年度の学会発表に伴う旅費・宿泊費として使用する予定である.
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Research Products
(3 results)