2011 Fiscal Year Research-status Report
多眼光線空間カメラを用いたデジカメ画像処理技術の研究
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23500231
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
蚊野 浩 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 教授 (60582351)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 画像入力装置 / カメラ / 画像処理 |
Research Abstract |
生画像の取得に際立った工夫を加え、後段に高度でコストが高い画像処理を施すことを特徴とするデジタル写真技術をComputational Photography(以下、CPと略)と呼ぶ。本研究は、CPの代表的な手法である多眼光線空間カメラの画像処理技術に関するものである。 今年度の第一の成果として、 マイクロレンズ方式光線空間カメラの撮影機能を精度良く模擬することが可能な、光線空間取得装置(多眼光線空間カメラ)を設計・開発した。これを用いて、多眼光線空間カメラの画像処理に関する研究を進めることが可能になった。現在は、縦横2mm間隔で撮影した15×15(=225)枚の低解像度画像を用いて研究を進めている。 多眼光線空間カメラを用いた第一の画像処理技術として、本装置で取得した低解像度画像群を8倍の画素数を持つ1枚の画像に高画素化する超解像処理の研究を実施した。従来の複数画像からの超解像処理は、複数画像間の位置ずれが、1つのグローバルパラメータで記述されることを仮定している。一方、多眼光線空間カメラで取得した画像群は被写体までの距離によって画素ごとに位置ずれ量が異なる可能性があるため、画素単位での位置合わせが必要である。また、低解像度画像には高周波成分の折り返しが強く含まれる場合があり、そのような場合でも正しく動作する位置合わせ手法が必要である。この課題に対して、入力である低解像度画像群と、推定される高解像度画像の画素値の誤差を評価する手法(「超解像化誤差に基づく位置合わせ手法」と呼ぶ)を提案した。本手法を検証中であるが、多くの場合に正しく動作し、高周波成分の折り返しを強く含む場合であっても、画素単位での高精度な位置合わせが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画による平成23年度の実施内容は、多眼光線空間カメラ装置を開発した後、その基本性能を明らかにすることであった。すなわち、マイクロレンズ方式相当の被写界深度制御が可能であることの実証、撮影画像の焦点深度やレンズのF値、画像のSN比などの基本性能を評価すること、および、通常のカメラの特性と同じ指標で評価することを計画していた。これらの項目については、学会発表が可能な程度に詳細な評価や新しい知見は得ていないが、最も基本的な機能である、撮影後の後処理によるカメラ焦点距離の変更(リフォーカス)の確認は容易であった。 一方、平成24年度に予定していた、多眼光線空間カメラで取得した低解像度画像に対する超解像処理による高画素化の研究を進めた。これに関して、研究実績の概要で記述したように、ある程度の成果を得た。これらを総合的に考慮すると、現在までの達成度はおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の実施予定項目の中で、優先度が低いと判断して詳細評価を実施していない項目について、評価を実施する。すなわち、撮影画像の焦点深度やレンズF値、画像のSN比などの基本性能を評価すること、および、通常のカメラの特性と同じ指標で評価することを実施する。その上で、すでに研究を開始している平成24年度の研究計画を、当初計画以上の成果を出して、完遂する予定である。 具体的な第一の事項は、平成23年度に試作した多眼光線空間カメラ装置の改良である。現在の装置の若干の問題として、移動ステージを2mm間隔で移動させながら多数の画像を撮影する作業において、撮影装置の振動が原因と考えられる、取得画像の微妙な位置ずれが見られる。これを減少させることは有意義である。また、撮影に用いる一眼レフカメラを、より撮像素子面積が大きいカメラに変更することで、取得画像のノイズやぼけを減少させることができる。これらの改良により、性質がより望ましい入力画像を得ることが可能になる。 第二の事項は、多眼光線空間カメラで取得した多数の低解像度入力画像に対する超解像処理アルゴリズムの研究開発である。平成23年度に着想を得た「超解像化誤差に基づく位置合わせ手法」を完成させ、高精度で誤差の少ない高解像度画像を生成するアルゴリズムを開発する計画である。この計画を強力に推進するために、アルゴリズム開発用言語であるMatlabを高速に実行できる計算機を導入する。また、提案手法を検証するための一つの方策として、市場で入手可能なライトフィールドカメラの性能と比較する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、多眼光線空間カメラ装置を改良するためにフルサイズ一眼レフカメラ(予定価格\450,000)と精密除振台(予定価格\160,000)を購入予定である。また、「超解像化誤差に基づく位置合わせ手法」の研究を強力に推進するためにワークステーション(予定価格\250,000)および市販のライトフィールドカメラ(予定価格\140,000)を購入予定である。物品費の合計価格は\1,000,000である。 研究成果を画像センシングシンポジウム(6月、横浜)と画像の認識理解シンポジウム(8月、博多)で発表する計画である。それに必要な旅費とその他費用として、\200,000を計画している。
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