2012 Fiscal Year Research-status Report
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23500241
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
栗山 繁 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20264939)
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Keywords | デジタル調光 / 光源色変調 / 間接光通信 / 情報配信システム / カラーLED照明 |
Research Abstract |
平成24年度は,多色発光が可能なカラーLED光源を用いたデータの送受信方式に取り組んだ.送信器の機能として,RGBの各光源の輝度を一定以上に保ちながら多段階に変調する方式を開発した.この変調方式で生じる輝度と色合いの変化量は,人の視覚的な認知能力の観点から許容できる範囲内である事を実験的に確認し,データの配信だけでなく照明としての機能も果たせる性能を達成できた.データの伝送には,配信する情報単位の境界と色変調の上限値と下限値を自動的に検出できるように,時系列信号にヘッダ情報を設けるプロトコルを実装した. 一方,受信器の機能としては,撮像素子の特性によって生じるクロストークを補正する手法,信号が変化する過渡状態における曖昧性の除去方法,およびブロック毎に受信した信号を条件付きの多数決によって推定する方式を開発し,信号の検出精度を向上させた. この送受信方式により,送信器としてのLED光源によって照らされる物体の表面特性に依存しない,安定した情報の復号が可能であることを実験的に確認した.最終的に得られた性能としては,短縮URLの表現に必要な約7バイトの情報を2秒という短時間で伝達できる性能が達成された.これらの成果は,デジタル調光式カラーLED照明を用いた情報配信機構と,デジタルカメラが搭載された市販のスマートフォンや携帯電話器を用いたアプリケーションとして配信情報を受け取るシステムを開発する際の基盤技術として利用する事ができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「情報伝送のための間接光の特性解明と制御機構の開発」に関しては,イメージセンサで観測される間接光の色特性を実験により調査してRGB光源色間のクロストーク現象が生じている事を確認し,その補正方法を導入した.また,光源からの光量が変化する際の過渡状態において生じる誤差の原因を究明し,観測した信号値を頑健に復号する機構を開発した.さらに,イメージセンサの画素を等分割したブロック毎に信号を復号させて,条件付きの多数決で復号する方式を開発し,配信情報の復号精度を向上できた. 本方式の実用性を評価するために,提案したカラーLED照明の変調方式が人の視覚にもたらす影響,輝度変化と色合い変化の二種類の観点より評価し,それらの変化が識別困難であると報告されている範囲内に変化量を抑える事ができた.これらの成果は,2件の国内会議と1件の国際会議で口頭発表し,その成果をまとめたものを電子情報通信学会の論文誌に投稿した. 「再構成可能なLED照明ユニットの開発」に関しては,ネットワーク型の接続トポロジーで構成される無線通信によって自律的な調光制御ができるLED照明ユニットを開発した.各ユニットには周波数帯域別に強度を計測できる照度センサを搭載し,各光源から照度センサに到達する光の割合(減衰率)を推定できる機構を開発した.さらに,外光やデスクライト等の他の照明が存在する環境においても,本照明システムの直下における屋内の明るさを所望の値に調整する機構を開発した.これらの成果は,2件の国内会議と1件の国際会議で口頭発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに開発してきたカラーLED照明の情報配信機構を拡張し,演出連動型の情報配信ツールとしての機能を実現する.具体的には,配信情報から生成される調光パターンと演出として生成したいパターンを違和感無く重畳する方法を検討する.特に,使用する光源の色がRGB3原色のいずれかに近い場合には,符号化の方式を動的に変化させる必要がある.また,カメラ撮影時の手振れがもたらす誤認識を低減させるために,イメージセンサ信号のフィルタリングや選択的な復号化を検討する. さらに,昨年度までは一般照明としての使用が可能なLED光源を用いてきたが,今後はカラーLEDによって照らされる広告用のアクリルボード(LEDサインボードと呼ばれる)に対して色変調による情報配信機構を実装し,その情報伝達性能や演出方法に関して調査・検討を進めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
LEDサインボードを開発するための部品代金と回路基板制作費,および受信器として用いるスマートフォンの購入代金等を本研究予算から計上する.また,研究で得られた成果を学会発表するための旅費や,投稿論文が採択された際の別刷代等を本研究予算から計上する.さらに,残額に余裕があれば情報配信システムを実装するPCサーバと,自律的調光が可能なLED照明ユニットの部品代金等に計上する.
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Research Products
(11 results)