2011 Fiscal Year Research-status Report
超高精細ヒト脳図譜の体系化によるオーダメイド脳図譜の構築
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23500244
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諸岡 健一 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (80323806)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳図譜データベース / 患者指向脳図譜 / 脳深部刺激療法 |
Research Abstract |
申請者らは, 日本初の試みである,形態解剖・生理情報を統合した究極の日本人デジタル脳図譜(脳の解剖的構造を示した地図)の作成を行っている.1つのデジタル脳図譜は,脳表の全周形状データから,組織・細胞構造のミクロの情報まで,膨大な量のデータから構成される.申請研究では, この大規模なデジタル脳図譜を用いたオーダメイド医療を実現することを目的とし,情報処理技術と医学的知識を融合しながら,複数の脳図譜を形態解剖・構造解析的観点から体系化した脳図譜データベースの構築と,そのデータベースと,医用画像や脳電気信号などの患者のセンサ情報を有機的な組み合わせによる,患者に特化した個別脳図譜の生成,に関する技術を開発する.平成23年度では,デジタル脳図譜データベース構築のための要素技術の開発を行った.具体的には,形態解剖的対応関係から複数のデジタル脳図譜間の対応付けを行う手法を開発した.2つの脳図譜から,それぞれ対応する断面を切り出し,2つの断面間AとBで特徴的な点を複数選び,各特徴点間の対応関係を指定する.これらの処理は,脳外科医の助言に基づき手動で行う.得られた対応関係に基づいて,Least-squares mesh法を用いて,断面Aの形状を、もう一方の断面Bの形状に大まかに合うよう変形し,それによって得られる断面をA'とする.その後,申請者が開発した手法である自己組織化可変モデル(SDM : Self-organizing Deformable Model)を導入して,A'の形状を変形させ,最終的にBの形状にフィットさせる.これらの処理を各断面ごとに繰り返すことで,2つの脳図譜間の対応付けが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時での平成23年度の目的は,複数のデジタル脳図譜間の対応付けを行う手法を開発することであった.【研究実績の概要】で述べたように,SDMを用いた対応付け法を開発し,複数の脳図譜を一つの基準となる脳図譜で表現することが可能となり,目的を達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は,構築したデータベースと,患者から得られるセンサ情報から,患者に特化した個別脳図譜を作成する手法を構築する.具体的には,各種画像から特定される関係を保持しつつ基準となる脳図譜(以後,SDBM)を変形し,個別脳図譜を効率的に作製する手法を構築する.また, 推定した脳図譜とその変形パターンをデータベースに逐次的に蓄積・更新する枠組みを実現し,データベースの拡充とオーダメイド脳図譜作製の精度向上を図る.同一人種の脳構造の差異は,個体差に加え,加齢と症例の影響を受ける.健常者脳は,個体差と加齢の影響のみを考慮すればよく,標準的な脳構造に対し比較的変形度が少ない.そこで,平成24年度では,構築したSDBM変形法を拡張し,年代の異なる多数の健常者脳画像を対象として,SDBMの変形パターンをモデル化し,そのパターンに基づく効率的な健常者脳図譜作成法を構築する.平成25年度では,健常者脳で構築した手法を,各種病態の患者画像に適用すべく拡張し,病態ごとの変形パターンのモデル化とそれに基づく脳図譜生成法を構築する.また,脳外科医の協力の下,術前に医用画像から推定した脳図譜を,術中の脳電気信号に基づいて修正する手法を構築する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では,並列計算機を購入し,患者個別脳図譜の推定処理を高速に且つ効率的に実行できるシステムを構築する.平成25年度には,計上した比較的小型の計算機および消耗品を用いてシステムを構築し,このシステムを手術室に持ち込み,術中の患者情報の取得や,構築した個別脳図譜の有用性の検証に用いる.【今後の研究の推進方策】でも述べたように,これらの装置は,研究を実施するのに必要不可欠である.また,研究成果は,国内外の関連学会での発表・論文で報告し,専門的情報を提供する.
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Research Products
(1 results)