2011 Fiscal Year Research-status Report
安らぎを感じる心象的空間イメージを作り出す環境音による聴覚刺激効果の脳機能的解明
Project/Area Number |
23500254
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
首藤 文洋 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10326837)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感覚 / 聴覚 / 脳科学 / 感性工学 / 生活環境 / モデル実験 / NIRS / 音楽 |
Research Abstract |
本年度は当初使用できる予算の減額があり調達予定計測機器の購入を見送り、実験計画を改変して実施した。(1)音刺激により惹起される情動反応の脳機能システムの解明:マウスを使い生活環境と音刺激経験をリンクさせたモデル動物実験を行った。成熟雄マウスを防音箱中に入れた通常ケージ中で1週間飼育した。次にはしごや隠れ穴、止まり木などの立体的な生活空間があり回し車などを入れた快適で広い生活環境ケージを防音箱に入れて音刺激を提示しながら9日間、また通常飼育ケージに比較して著しく容積の少ない飼育ケージで別の音刺激を提示しながら9日間飼育した。その後通常飼育ケージで1週間飼育した。生体反応記録実験では動物にそれぞれの飼育環境で提示した音刺激とそれまでに提示したことのないホワイトノイズを提示しそれぞれを聞いたときの自律神経活動を頭部皮膚表面温度と心拍数計測で行った。また各実験環境での体重変化を記録した。狭い生活環境ケージ飼育時に対し広い生活環境ケージ飼育時では体重増加が有意に抑制された。各生活環境で提示した音とホワイトノイズを提示したときの自律神経活動に有意な変化はなかった。従って、狭い飼育環境と広い飼育環境の実験モデルが適切に機能してモデル動物の生理機能に影響を与えたがその影響は使用した非侵襲的計測法による自律神経反応ではその変化が捉えられない事が示された。(2)音刺激により惹起される主観的空間イメージの数値化:本年度は音を聞いたときに被験者が感じた印象と提示内容の合致感との計測機器を試作した。提示が連続変数的要素をもつ場合にどの時点で合致したかの判断を悉無的に行うことは難しいので、圧力センサーを使い無段階に押し込み可能なスイッチを使い合致感覚の強さとセスイッチの押し込み圧力との関係を調べた。現在押し込み圧力の変化と合致感覚形成の特性解明のため皮膚表面電位計測と光トポグラフィー計測との相関を解析中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度中の予算減額および再配分のため、当初の研究計画を余儀なく変更して研究を進めた。本研究遂行に必要な新規の基本実験パラダイムの構築を中心に進め、予備的な実験結果からそれがほぼ確定したことが示されている。従って研究遂行の方法論的な基盤完成を目的としていた本年度の目標は達成されたものと判断出来る。以上の理由により上記区分の達成度を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度途中の配分予算減額と再配分のために余儀なく変更した昨年度計画分を含む以下のサブテーマ(1)(2)および(3)の実験を行う。サブテーマ(1) 被験者の主観的評価の妥当性を検証する客観的生理指標の特定:被験者に予め言葉もしくは図形を提示してその言葉が示す画像もしくは同一の画像を続いて提示する一連の画像サンプルの中から見つけるよう指示し、この間の大脳皮質活動と自律神経反応を計測する。正解にあたる画像が提示された時間に各計測器にトリガーを配信し、そのトリガー前後と全く違う画像を見たときの脳・自律神経活動記録を比較してヒトが「合致した」と感じたときの「合致感反応」を明らかにする。サブテーマ(2) 音刺激により惹起される主観的空間イメージの数値化:スライダーを操作すると画像視野の対角線角度が無段階に変化するツールを作成する。本年度はこのツールが音を聞いたときに被験者が感じた空間の広がりに合致した視野を表現することに有効なようにツールを随時改変する。具体的実験として、用語対の間に設けたスライダーを操作することで、提示音から受けた気分がどちらの言葉にどの程度近いかをスライダーの位置で回答させる質問ツールを、音の情動印象を表現するのに必要な対になる言葉と質問の数を検討して作成する。サブテーマ(3) 音刺激により惹起される情動反応の脳機能システムの解明:昨年度に完成させた「生活経験豊富なモデル実験動物」実験パラダイムを使う。具体的にはそれぞれの生活環境で聞かせる音刺激の組み合わせを試し、それぞれの実験で生じた生理変化の差異を検出するため、侵襲的方法を含む生理反応解析を試みる。現段階ではまず、脳電場電位計測法とマイクロダイアリシス法を使用する予定である。音刺激がもつ情動に対する影響を調べ、適切な刺激音を提示する。本年度は、楽音を理論的特性を考慮して選択して刺激音に使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、昨年度購入を見送った生理反応計測システム導入を予定している。しかし機器の価格改定や仕様変更と実配分予算を考慮する必要があるため、当初導入を予定していた機器の導入が難しいため、適切な仕様をもつ代替機器を導入せざるを得ない。そのため、具体的な導入機器の形式などは本仕様計画に記載できない。本年度同様の実験に必要な消耗品購入費用のほか、被験者実験での被験者と実験補助者短期雇用のための謝金、研究成果発表とその討議のための学会発表経費および研究成果発表のための論文投稿経費を次年度の研究費より使用する計画である。
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Research Products
(1 results)