2011 Fiscal Year Research-status Report
血液循環・自律神経解析に基づく感性定量評価の基礎研究
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23500262
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 政司 北海道工業大学, 医療工学部, 教授 (40210421)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感性 / 精神生理学的興奮指標 / ρmin / 自律神経 / ゲーム難易度 / 検証 |
Research Abstract |
交感神経は覚醒状態では通常ある程度の緊張を保ち、心臓などの臓器に対してTonicな調節を行っている。また、迷走神経活動は肺の伸展受容器などからの影響などで心臓に対してPhasicな調節を行っている。申請者が発見した精神生理学的興奮指標ρminはPhasicな調節に注目した指標である。しかし、実際の興奮場面では刺激の強さに関連してTonicな調節も重要となるので、これら両方の調節を考慮した解析法の方が興奮指標として適合性が上昇するものと考えられ、混合解析法としてプログラム化した。 この混合解析法による指標と精神生理学的興奮指標ρminを用いて、未だ実験的検討がなされていない感性について調査した。「快」性の興奮として「笑い」、「不快」性の興奮として「怒り」を用いて実験を行ってその生体反応を解析し、興奮度の主観的評価との順位相関を比較した。その結果、ρminは各刺激に応じて変化し、主観評価興奮度とよく順位相関するが、混合解析による指標はρminほどには主観評価と相関しない結果となった。また、自律神経解析の結果は、それぞれの感性に応じた対応をせず、主観評価との相関もなかった。従って、実験室で喚起する興奮刺激程度では、交感神経活動のTonicな調節はそれほど影響を与えず、Phasicな調節が重要であることがわかり、ρminの有効性を確認した。 さらに、刺激強度に対する自律神経指標や興奮指標ρmin応答の線型性を確認するため、コンピュータによる「サッカーゲーム」を使用し、それぞれ4段階の難易度を付けて興奮刺激として用いた実験を行った。その結果、ρminはゲーム難易度の上昇につれてその絶対値が単調減少し、主観的興奮度とも順位相関する結果を得たので、その有効性を実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究項目として、第一に新しい概念を取り入れた混合解析法のプログラム化であるが、これは交感神経のTonicな調節とPhasicな調節を考慮した解混合解析法としてプログラム化して用いることができた。 第二に、この混合解析法による指標と精神生理学的興奮指標ρminの有効性について具体的な実験を通して検討することであるが、「快」性の興奮として「笑い」、「不快」性の興奮として「怒り」を用いた実験を行って比較検討した結果、混合解析による指標はρminほどには主観評価と相関しない結果を明らかにすることができた。また、自律神経解析の結果も含めて比較検討することで、ρminの有効性を確認することができた。 第三に、刺激強度に対する自律神経指標や興奮指標ρmin応答の線型性を確認することであるが、コンピュータによる「サッカーゲーム」を使用し4段階の難易度を付けて興奮刺激として用いた実験を行った結果、ρminはゲーム難易度の上昇につれてその絶対値が単調減少し、主観的興奮度とも順位相関する結果を得たので、その有効性を実証することができた。 以上から、当初予定の研究項目はすべて完了したのでおおむね予定通りの達成度を示していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、感性の客観的評価の有効性を高めるために精神生理学的興奮指標ρminの生理学的特性を明らかにし、様々な条件においても適用できる基礎知識を獲得する。1. 自律神経賦活刺激を用いた興奮指標の生理学的特徴 自律神経と関連の深い興奮指標について、自律神経評価の標準的手法であるHead-up tilt試験および寒冷昇圧試験などを用いて興奮指標の応答を解析評価し、自律神経活動評価法との対比を通してその生理学的特徴を明らかにする。2. 呼吸周波数依存性の調査 興奮指標が呼吸と心臓血管制御に関連することから、呼吸周波数を種々に変化させた時の興奮指標の生理応答を解析調査し、その依存性を明らかにして考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費が生じた理由は、震災の影響で減額予定だったため、購入予定品の購入を断念したこと、および購入予定ソフトウェアが新しいコンピュータシステムの64ビット版に対応できていない理由で断念したためである。<研究費の使用計画>物品費:モニタ付きデータレコーダ200,000円、計測・解析用ノートPC100,000円、実験用消耗品などの物品費249,411円であり合計549,411円、旅費:国際会議出席(KEER2012台湾)200,000円、国内旅費(大阪3泊4日)139,000円、人件費・謝金:アンケート調査、データ取得用人件費・謝金30,000円、その他:論文投稿、学会講演投稿、その他200,000円
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