2012 Fiscal Year Research-status Report
血液循環・自律神経解析に基づく感性定量評価の基礎研究
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23500262
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 政司 北海道工業大学, 医療工学部, 教授 (40210421)
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Keywords | 感性 / 精神生理学的興奮指標 / ρmin / 自律神経刺激 / 呼吸 / 生理学的特徴 |
Research Abstract |
本研究で考案された精神生理学的興奮指標ρminについて、その有効性を確認するためにρminの生理学的特性を明らかにすべく、二つの観点から検討した。 一つには、自律神経賦活刺激を用いたρminの生理学的特徴についてであり、呼吸生理に基づく興奮指標は自律神経と関連することが推測されることから、自律神経評価の標準的手法であるHead-up tilt試験および寒冷昇圧試験を用いて解析評価し、自律神経活動評価法との対比を通してその生理学的特徴を明らかにした。その結果、ρminはtilt角0°、45°、90°において有意な違いが無く、各tilt角において冷水刺激を与えても変化しないことも確認できた。これは、交感神経のβ受容器応答やα受容器応答を引き出す刺激、あるいは副交感神経優位な状態に対してρminは変化しないことを示し、自律神経活動とは独立な生理学的指標であることがわかった。さらに、このρminは冷水刺激に対する応答においてその反応に個体差が生じやすく、体重、基礎代謝量などと負の相関を示すことがわかった。 二つには、ρminが呼吸周波数に依存してどのように変化するかの調査であり、ρminが呼吸と心臓血管制御に関連することから、呼吸周波数を種々に変化させた時のρminを解析調査し、その依存性を明らかにした。その結果、通常楽に呼吸が出来る安静時呼吸周波数である0.2Hz~0.3Hzでは、ρminは高い値を示すが、それ以上周波数を上げたり、逆に下げたりするとρminは低下することがわかった。この場合には呼吸周波数を維持するのに努力が必要となることが原因であると考えられる。興奮時には呼吸が早くなったり強くなったりすることと関連するものと考えられた。ただし、同時計測した心拍数や酸素飽和度に呼吸周波数による変化は見られなかった。 以上、二つの観点から興奮指標ρminの生理学的特徴が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究項目として、感性の客観的評価の有効性を高めるために精神生理学的興奮指標ρminの生理学的特性を明らかにし、様々な条件においても適用できる基礎知識を獲得することであるが、第一に自律神経賦活刺激を用いた場合のρminは、自律神経活動に即して変化することはなく、自律神経活動と独立して変化することが確認できた。さらに、その変化には個体差が出現する場合があり、特定条件にて体重や基礎代謝量に応じた変化を示す特徴などが明らかにされ、興奮指標として適用する場合の精度向上に役立つ結果が得られた。第二に、ρminの呼吸周波数依存性の調査により、ρminは自然な呼吸から外れた場合にはρminの値が変化しうることが判明した。この自然な呼吸からはずれた呼吸周波数の状態は、興奮時の脳の酸素需要により呼吸―心臓血管制御の変調に起因するρminの反映するものと似た状態を表すことからうなずける結果と成ったが、様々な場面でのρmin適用時の解釈には呼吸周波数の評価もしておくことが有効なことが分かった。 以上から、当初予定の研究項目はすべて完了したのでおおむね予定通りの達成度を示していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、感性3軸モデルの基盤の一つである「緊張-弛緩」軸に対応する客観的生理指標について究明する。事前に主観評価を実施して実験に適用できる主観値を持つ緊張刺激、弛緩刺激に対する血液循環・自律神経応答パラメータを詳細に解析し、主観的緊張度に対応する生理的な指標を見出す。また、ストレス研究で混同されがちな不快刺激に対する応答との違いについても検討する。これらから、「緊張-弛緩」軸に対応する生理指標を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費が生じた理由は、前年度に震災の影響で減額予定だったため、購入予定品の購入を断念したこと、および購入予定ソフトウェアが新しいコンピュータシステムの64ビット版に対応できていない理由で断念したために生じた前年度残金がほぼそのまま残ったものである。 物品費:モニタ付きデータレコーダ200,000円、計測・解析用ノートPC150,000円、 実験用消耗品などの物品費264,590円;合計で614,590円 旅費:国際会議出席(11th ICPA カナダ)200,000円、国内旅費(京都3泊4日)140,000円 人件費・謝金: アンケート調査、データ取得用人件費・謝金30,000円 その他:論文投稿、学会講演投稿、その他200,000円
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