2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23500264
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松川 睦 日本大学, 医学部, 助手 (90318436)
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Keywords | 感性脳科学 / 感性形成機構 / 個体差形成 |
Research Abstract |
これまでの研究から実験動物は、先天的に(生まれて初めて嗅ぐ匂いであっても)匂い物質によってストレスを感じたり、逆に初めて嗅ぐ匂いによってストレスが緩和されたりすることを報告してきた。そして匂い物質を、1.先天的にストレスを誘発する匂い、2.先天的にストレス反応を抑制する匂い、3.脳内の神経活動を広汎に活性化することで特定の物質に対する選択的な反応を減弱する匂い、4.何の影響も生じない匂いの少なくとも4種類に分類できることを示してきた。そこで先天的には何の影響も生じない、つまりストレスを生じることも緩和することもない人工的な匂い物質を用いて、この匂い物質を実験動物の生育環境臭とすることで成体になってからの匂い誘発ストレスに対して緩和効果を示すようになるのかについて検討することを目的とし、本研究を行った。先天的に何の影響も生じない人工的な匂いとしては新聞紙臭を用いた。その結果、通常の匂い環境下で生育した動物群では、成体における匂いストレス反応誘発時に同時に新聞紙臭を嗅がせてもストレス緩和効果は見られなかったが、新聞紙臭の環境下で生育した動物群では、成体でのストレス反応が同時に新聞紙臭を嗅がせることで有意に緩和された。さらに、脳内の活動神経細胞数の解析により、この人工臭によるストレス緩和効果は、先天的にストレスを緩和する匂い物質であるバラ臭と同様に選択的にストレス関連神経活動を抑制した結果であると推察された。これらの結果は、未知の匂いであってもその匂いを経験することによって、生来の、持って生まれた価値判断基準が改変され、新たな匂いに対する価値判断基準が形成されたことを示しており、感性における個体差の形成過程において重要な意義をもたらすものと考えられた。
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