2012 Fiscal Year Research-status Report
不完全データのファジィ共クラスター抽出に関する研究
Project/Area Number |
23500283
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
本多 克宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332964)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市橋 秀友 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30151476)
|
Keywords | 共クラスタリング / 協調フィルタリング / 意思決定支援 / ファジィクラスタリング |
Research Abstract |
本研究では,共起関係や不完全性,非ガウス性などのデータに内在する特異な特性を許容するデータ分類手法の開発を目的としている.第2年度は理論的・応用的側面からの展開として,以下の成果を上げた. (1) 共クラスタリングに基づく協調フィルタリングの発展として,バッチ処理による効率的な計算に基づくFCM型の共クラスタリングにおいて,アイテムの分割に選択的な排他的制約を付加する手法を提案し,協調フィルタリングにおける推薦性能の向上を確認した.また,FCM型クラスタリングで問題となるパラメータ設定方法を自動化するため,共クラスタリングに特化した新たな妥当性尺度を開発した.これらの成果について,2件の英文学術論文誌発表と,2件の国際会議発表,および3件の国内学会発表を行った. (2) ファジィクラスター分析に基づくデータのコード化の新たな応用展開として,データの匿名化によるプライバシー保護データマイニングにおける有効なアルゴリズムを開発した.ファジィ分割を用いた匿名化により,従来法よりも少ない情報損失でプライバシーが保護できることを示した.これらの成果について,3件の国際会議発表,および2件の国内学会発表を行った. (3) ファジィクラスタリングの理論的基盤の考察として,非ユークリッド性を有する関係性データからの局所的低次元マップの構築法やグループ意思決定支援への展開に関する研究を行った.これらの成果について,1件の英文学術論文誌発表と,1件の和文学術論文誌発表,7件の国際会議発表および6件の国内学会発表を行った.また,意思決定への展開については,和文学術論文誌に1件の解説記事を発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論的・応用的側面からの展開を図った第2年度においては,当初の研究の目的を充分に達成する成果を得た.以下に,個別の課題における達成状況を述べる. (1) 共クラスタリングの改良にかかる課題では,バッチ処理によるFCM型の共クラスタリングのアルゴリズムとの融合により,計算効率の良い推薦モデルの構築を可能にした.また,FCM型の実応用において問題となるパラメータ設定についても,自動設定を可能とする妥当性尺度を開発し,応用可能性を高めた.これらの成果は,当初に想定した協調フィルタリングへの応用展開の目標を完全に達成するものであった. (2) 協調フィルタリングへの応用においては,購買履歴情報という個人情報を取り扱う性質上,プライバシーの保護が不可欠となる.この課題を克服すべく,クラスター分析によるデータのコード化がもたらす匿名性を活用したプライバシー保護モデルを開発した.当初計画ではプライバシー保護モデルにまでは言及していなかったが,データの匿名化機構を融合した協調フィルタリング法への展開が開けたことで,実用化の道筋を開拓しており,想定を超える成果が得られた. (3) その他の展開としては,グループ意思決定への応用において,多数の意思決定者の意見を効率的に集約する手順を開発し,意思決定者間の個人的な対立を避けながら議論を進めるモデルへと発展させる構想を得た.したがって,目標に達する成果が得られたものといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度に引き続き,最終年度となる第3年度においても, 理論的・応用的側面の両面について展開を図る.理論的側面については,実世界でしばしば構築される分散型データベースの複合的な活用を可能にする並列型の共クラスタリングモデルの開発を目指す.同時に,ビッグデータの活用を目指した計算効率化のアルゴリズムも志向する.また,グループ意思決定への展開においては,ノイズクラスタリングとの融合による直感的な理解が容易な集団意思の要約・提示方法の開発を目指す.少数派の意見が目立つことによる個人間の対立を防ぎながらシナリオの相違を反映した意思決定の支援が可能となるツール開発も視野に入れる. 一方,応用的側面については,まず,協調フィルタリングにおける推薦モデルの実用化プロトタイプの構築を目指す.これまで開発してきた共クラスタリングモデルと妥当性評価尺度は,計算効率の良さと匿名性の高さから,安心・安全な高精度推薦システムの構築に適した特性を有している.その実用化への道筋として,プロトタイプシステムとなるインタフェース・ソフトウェアを開発する.当該ソフトウェアは,(1)個人のプライバシーを保護しながら履歴データを少ない情報損失で匿名化する機構,(2)匿名化データから共クラスター構造を抽出する機構,および(3)共クラスター情報を利用したユーザへの推薦アイテムの決定・提示の機構,という三つの機構から構成されるもので,パラメータの自動決定の機構と組み合わせることで,実用化プロトタイプとしての公開を目指す. そのほか,太陽光発電によるスマートハウス実現のための発電量分析・予測モデルへの拡張なども視野に入れ,応用展開をはかって行く.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
応用的側面を進めるにあたり,計算機シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータ(3台)と関連ソフトウェアを購入し,研究室の大学院生(M2:3名,M1:4名)の協力のもと,C言語プログラミングをベースとした検証実験を進める.ここで,汎用的なパーソナルコンピュータを使用する理由としては,大規模なデータの取り扱いを汎用的な機器で可能とすることが,本研究の目的に含まれるからである.以上のために,物品費および人件費・謝金の支出を計画する. また,得られた成果の発表の場として,7月にインドのハイデラバードで開催されるファジィシステムに関するIEEE国際会議(FUZZ-IEEE2013),9月に北九州で開催される知識に基づく知的情報工学に関する国際会議(KES2013),9月に大阪で開催される第29回ファジィシステムシンポジウム(FSS2013)および11月に韓国の大田で開催される高度知的システムに関する国際シンポジウム(ISIS2013)を見込んでいる.以上のために,旅費およびその他費の支出を計画する.
|